「一歩一歩、おいしさを探して」
J.C.オカザワの脚で綴ったダイアリー

第257回
神楽坂の罠 (その3)

神楽坂らしい粋な佇まいについだまされて
訪れてみたフランス風創作料理の「かみくら」。
ハートランドの生ビールに続いて
ブルゴーニュの赤、ピエール・アンドレの
ラドワ・レ・ブレノ’04年(8700円)を抜栓したが
同調してくれる料理がやってこない。

エスカルゴとしいたけの軽い煮込みは
煮汁の風味が豊かなのにポーションが小さく、
食べたような気がしない。
とても2人でのシェアが許される量ではなかった。
シャロレ種仔牛のポワレは
肉にかなりの赤みが差しており、
すでにミルク以外の餌を口にしてしまった様子。
イベリコ豚のグリエにしても
今一歩コク味に欠けて、ものたりなさが残った。

ちょうどワインも底をついたし、
「かみくら」ではパスタやライスものをパス。
もちろんドルチェには目もくれない。
当夜はそこから歩いて数分の距離にある
行きつけの「かぐら坂新富寿司」で
小ぶりのにぎりをつまみながらの
飲み直しということで意見の一致をみた。

失望小さくなかった「かみくら」を右に見ながら
なおも裏路地を進んで突き当たったところが
和食の名店「越野」。
おまかせが性分に合わないJ.C.には
この店のアラカルトがとてもうれしい。
コース仕立てでだらだらと
多くの皿を出されるのは苦手中の苦手。
中には意に染まない料理も当然含まれる
リスクを伴うわけで、そこが何とも不満。
言わば「上手な鉄砲も数打ちゃ外れる」のである。

大分のはだか麦焼酎・兼八をロックでやる。
数年前まではさして有名ではなかったこの焼酎、
持ち前の香ばしさが功を奏してブームを迎え、
プレミアムまで付くようになった。
俄かブームにも困ったものだ。

2品ほど出る突き出しが秀逸なので
あとは自家製の唐墨か、
自家製はハナから無理な鯨ベーコンのどちらか。
そして九条ねぎと本まぐろの煮物、
いわゆるねぎまの小鍋仕立てを。
冬場は当然ふぐの季節となるが、
夏には活おこぜが推奨のサカナ。
1尾丸ごとをまず薄造りで楽しみ、
そしてアラの唐揚げのあと、
最後に中骨を使った赤出しと食べつくす。
「越野」の味噌椀・新香・ごはんの3点セットは
締めくくりとして should not be missed の逸品揃い。
途中、飲みすぎ・食べすぎは禁物で
かならずお腹に余裕を残しておかなければいけない。

冬場には雪見障子から
雪を眺めながらの食事もと店主は言うけれど、
地球温暖化のせいで、そうは問屋が卸さなくなった。
季節はさておき、一年中いつ訪れても
期待を裏切られることはない。
申し遅れたが、土地の人々は
この細い路地をかくれんぼ横丁と呼ぶ。

        =おわり=

 
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2007年6月26日(火)

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