「一歩一歩、おいしさを探して」
J.C.オカザワの脚で綴ったダイアリー

第258回
満州焼きとは何ぞや?

満州焼きという食べものをご存知だろうか?
この文字を目にしたときは
いろいろと思いをめぐらせた。
小学校に上がる前、小諸懐古園内の
小さな動物園で満州豚を見たことがあったから
仔豚の丸焼きかなとも想像したし、
あるいはお好み焼きかドンドン焼きの一種で
満州名物の餃子のように
にんにくでもたっぷり使うのかしらとも思った。

初めて満州焼きの文字に接したのは
小津安二郎の映画の中だった。
記憶があいまいで、それがどの映画だったか
特定ができないのだが、
1930年代半ばから40年代の終わりに
撮られたものであることは間違いない。
食堂のワンシーンで、壁の品書き札に
かつ丼だか焼きめしだかに混じって
満州焼きとあったのだ。

初夏の日差しもうららかな横浜に2日ほど遊ぶ。
その夜は「次郎よこはま店」のあとに
居抜きで入った「鮨 はま田」で夕食を取るつもり。
夕刻には関内に到着し、相生町・太田町界隈を散策。
途中「浜一番」なる焼き鳥屋の店頭に
その満州焼きを見つけたのだ。
これは鮨のあとで訪ねなければと心に留める。

その足で太田町2丁目の「鮨 はま田」に向かうと
早くも横浜では人気店なのだろう
満席の憂き目を見ることと相成った。
30分かそこいらで席が空くと聞き、
携帯電話の番号を伝えておいて6丁目に引き返す。
カンのいい読者のお察しの通り、
「浜一番」に舞い戻ったわけだ。
それにしても「鮨 はま田」、「浜一番」と
さすが港町「ハマ」だけに屋号にも「ハマ」が目立つ。

昭和36年当時の品書きのコピーが置いてあり、
多種多彩な焼きとんの品揃えに感心しながら
さっそく生ビールと焼きとん&焼き鳥の数々。
店主に満州焼きとは何ぞや?と訊ねると
豚のカシラの味噌ダレ焼きのことで
別名・浜一焼きというお答え、もちろんお願いした。

焼き串はみな小ぶりなのでスイスイいけてしまう。
豚のタン・コブクロ・ナンコツは塩、
豚のレバー、鳥ねぎと鳥のつくねはタレで焼いてもらった。
お待ちかねの満州焼きは
カシラの食感もミッシリと噛み応えじゅうぶん。
ほかの部位よりも咀嚼を要するため、
濃い目の味付けなら味噌に限ると
おそらく判断したものと思われる。
でも満州焼きの名前はどこに由来したのだろう。
これは「浜一番」の店主もご存知なかった。

翌日、日ノ出町で居酒屋「庄兵衛」に出くわす。
野毛町に本店のある「庄兵衛」なのだが
支店の店先に元祖・満州焼きとあった。
帰宅後、ネットで調べると、
横須賀にも満州焼きを出す店があった。
サンマーメンの如く、神奈川県の郷土料理に
認定される日もそう遠くないかもしれない。

 
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2007年6月27日(水)

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