「一歩一歩、おいしさを探して」
J.C.オカザワの脚で綴ったダイアリー

第259回
横浜で一番の鮨なのか?

横浜は関内駅に近い太田町の「浜一番」で
小津安二郎の映画でその名を知って以来、
気になっていた満州焼きを食べ終えた頃、
携帯電話がブルブルッと当たりを見せた。
うっかりすると、とんでもない恥をかくので
携帯を持ち始めてからはずっと
マナーモードに設定して
ズボンの左ポケットに収めている。

先刻は満席で入店できなかった
「鮨 はま田」より呼び出しが掛かったのだ。
支払いを済ませて、太田町2丁目に取って返す。
「浜一番」ですでに生ビールを飲んでいるから
ここでは小瓶を1本だけにしておき、
すぐに芋焼酎の一刻者へ移行。

若き親方は銀座「青木」出身の浜田剛さん。
実に強そうな名前だ。さもありなん。
往年のハードパンチャー浜田剛史を
否が応でも連想してしまう。
アルレドンドを1回KOした世界戦が
まぶたに焼き付いて離れない。
その2年後にはリベンジされたけれど。
名前はスゴいが、見た目は逆に優しそうで弱そう。
可愛い奥さんと2人だけで営んでいる。

カウンターにどこか見覚えのある初老の女性。
次から次へと召し上がられて、なかなかの健啖ぶり。
どうしても思い出せず、引き揚げたあとに
親方に訊ねると、銀座「青木」の大女将だった。
どうりで・・・。

突き出しは、天豆と蛍いか。
最初に切ってもらったのは真子がれい。
やや薄めにお願いする。
するとその真子がれいの肝の煮付けが出された。
ほんのちょっと生臭みを感じたのは
肝に血管が残っていたのだろう。
たこの桜煮はいい仕上がりだった。

焼きとんと焼き鳥をつまんでいるので
つまみはこれくらいにして、にぎりへ。
皮切りのあおりいかは
ネットリとした旨みが舌にまとわりつく。

小肌には芝海老のおぼろをカマせてきた。
この仕事は大好きで、小肌の酸味とおぼろの甘さが
酢めしを仲立ちにして絡み合う。
塩気より酢の酸っぱさが主張する酢めしも
ビシッと硬めに炊かれて好きなタイプ。

春子の昆布〆が小肌に匹敵するデキの良さ。
〆てからサッと瞬間的に湯引きすることによって
皮目が柔らかくなり、歯に当たらなくなるのだ。
駒込の「ゆうひ寿司」の親方に教わった。

みる貝は本みると呼ばれる黒みる貝、不味いワケがない。
煮はまぐりも煮つめとのバランスがいい。
芝海老と山芋入りの玉子と
じゅんさいの赤出しで締めて、この1時間を振り返る。
横浜市内にここより優れた鮨店は知らない。
以前この場所にあった
「次郎よこはま店」より高い評価を与えたい。

 
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2007年6月28日(木)

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