「一歩一歩、おいしさを探して」
J.C.オカザワの脚で綴ったダイアリー

第261回
血と肉のイタリアン (その1)

深夜に「山東」の水餃子を食べた翌日も
まだ横浜にいて、昔の面影を色濃く残す野毛や
黄金町や曙町あたりを徘徊していた。
風俗の乱れで悪名高かった黄金町は
地元の売春撲滅キャンペーンのおかげで
火が消えたようにさびれ果てている。

伊勢崎町界隈のいわゆる関外から関内に戻り、
今宵のディナーの行く先を吟味にかかる。
気分的には洋食かフレンチかイタリアンで
赤ワインを飲みたい。
横浜という街は港町特有の異国情緒にあふれて
オシャレな雰囲気にも満ちており、
概して首都圏の人間には好意的に
受け止められているのだけれど
食事となると、あまり美味しい店に当たらない。
夜の街に出て酒を飲むぶんに苦労はしないが、
レストラン選びは難航するのだ。

南仲通に「パネ・エ・ヴィーノ」なるイタリアンを発見。
店名は、パンとワインの意。
となれば、イエス・キリストの血と肉だ。
わりと大胆なネーミングと言えよう。
店頭のメニューに惹かれるものがあったので即断。
中へ入って予約をしておく。
夜には友人と合流するので、2名掛けのテーブルを。

好みの銘柄のビールがあって快調な滑り出し。
それもリストランテには珍しく大瓶できた。
あまり酒が飲めない友人はアペロールをチビチビと。
赤ワインはキャンティ・クラシコ。
マッツェイ社のフォンテルートリ'04年(5200円)で
これもまたお気に入りの1本。
この店とは相性が良さそうだ。

初めの1皿はイタリア風ミックスサラダの
インサラータ・ミスト。
ゆで玉子以外に動物性たんぱく質は皆無。
アスパラガス・絹さや・シュガースナップ・
ルッコラなど10種類ほどの野菜が盛られている。
これにツナやアンチョヴィが加わったら
フレンチの定番のニース風サラダの出来上がりだ。

イタリア料理店ではスープを滅多に
注文しないのにもう1品はミネストローネ。
これには豆類・にんじん・キャベツがたっぷり。
なぜアンティパストに野菜ものを並べたかというと
すべては前夜の夕食と夜食に起因する。
焼きとん・江戸前鮨・水餃子では
餃子にニラが入っていても、明らかに野菜不足。
それを補おうという腹積もりなのだ。

お次が店先でメニューに目を通した際に
魅力を感じた魚介類のクスクス。
もともとクスクスは好きである。
学生時代にパリのカルチェ・ラタンで
初めて口にして以来、ずっと好物であり続けている。
カルチェ・ラタンにあれほどあった
アラブのクスクス料理店は四半世紀も前に
みなギリシャのスブラキアに取って変わられた。

          =つづく=

 
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2007年7月2日(月)

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