「一歩一歩、おいしさを探して」
J.C.オカザワの脚で綴ったダイアリー

第267回
京橋の鮨が燃えている (その1)

鮨と言えば銀座。
東京及びその近郊の鮨職人の過半数は
いつの日か銀座に暖簾を掲げてみたいと
思っているのではなかろうか。
銀座では鮨屋の出店・閉店が引っ切りなしだ。

銀座の北隣りの京橋。
この町にも鮨の名店が数多い。
「すきやばし次郎」の親方が修業した「与志乃」。
戦後間もなく、魚卸から鮨屋に転じた「京すし」。
昔風の「初音寿司」が変身した「目羅」。
銀座・浅草に劣らぬ老舗が並ぶ。

ちょいと八重洲や日本橋に足をのばせば
どちらも甲乙つけがたい名店の
「おけい寿司」と「吉野鮨本店」がデンと構えて
これだけ打ち揃うと銀座にも匹敵しうる鮨軍団だ。

京橋の交差点の北東側。
天ぷらの人気店「深町」の近くに
ちょうど1年前に開店したばかりの「藤山(とうざん)」。
行こう行こうと思ううちに
月日ばかりが経ってしまって、今回初めて訪れた。
予約の電話を受けてくれた女性が感じよくて
気持ちよく出掛けていった。

喉をうるおすスーパードライの生は小さめのグラス。
1杯だけ飲んで中瓶に切り替える。
ビールのあとは芋焼酎・黒鉄幹のロック。
突き出しのだだ茶豆には今一つ旨みが感じられない。
これはゆで方に問題ありだろう。

さっそくのつまみが、まず真子がれい。
夏の白身としては星がれいには及ばぬものの
鯒と双璧で、冬場の下手な平目よりいいくらい。
フランス料理のアン・クルート(パイ包み焼き)や
ポワレにはすずきがいいけれど、
刺身ならすずきより真子がれい。
洗いならば鯒が好きだ。
はたして「藤山」の真子は一級品であった。

お次は伊豆七島のどこかで獲れたという縞鯵。
天然の縞鯵はほとんど出回らないらしいが、
どうやら天然らしい。
そのわりに身肉の色合いが淡い気もした。
死後硬直が解けかかってほどよいコリコリ感。
青背のサカナの中ではもっとも白身に近い
高級魚はやはりかんぱちや平政の上をゆく。

「藤山」はおまかせにする客が多い。
われわれはお好みで通したが、
隣りの社用族の男性2人はおまかせ。
おかげでその内容をつぶさに観察することができた。

チラリのぞき見た金目鯛の煮付けが
看過できないほどに、とても美味しそう。
小ぶりの切り身もちょうどよいサイズで
すかざずお願いすると、これがクリーンヒット。
皮目と身肉の間のトロンとした脂っ気が
何とも言えず、思わずうなってしまった。

         =つづく=

 
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2007年7月10日(火)

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