「一歩一歩、おいしさを探して」
J.C.オカザワの脚で綴ったダイアリー

第268回
京橋の鮨が燃えている (その2)

京橋の鮨店「藤山」のつけ台で
黒鉄幹のロックとともに味わった
金目鯛の煮付けにうならされたあとは
ちょいと小ぶりの白いか。
槍いかや赤いかの仲間だが
コリッとくる槍いかよりもねっとり感を持ついかだ。
やや太めの短冊に切られているを生姜醤油で。

墨いか・あおりいかは、わさびとの相性がいいが
白いか・するめいかは、生姜のほうに分がある。
ただし酢いかとなると
押しなべてわさびが活躍することになる。
これは生と酢〆の真鯵やさよりにも言えることだ。

鮨屋では滅多に頼むことのない海胆ながら
目の前のケースの中に箱入りの海胆を見とめ、
レッテルの利尻・礼文の文字に食指が動く。
お味のほどを親方に訊ねると、自信ありとの応え。
良質の昆布を存分に食べて育ったものだから
昆布の香りがすると言う。

当夜の相方が無類の海胆好きで
すでに目を輝かせている。
はたして一粒つまんで、再びうなった。
する、する、昆布の香りも味もする。
あえて表現すれば
生海胆の昆布〆を食べているかのよう。
デリケートな滋味が舌の上に拡がって
添えられた焼き海苔がまったく必要ないくらい。

地だこの足の先っちょを切ってもらって
青柚子を当たった天然塩で味わう。
たこは付け根より先が好き。
もっと好きなのは吸盤だが
そこだけもらうわけにもいかない。

この店の名物の出汁巻き玉子が焼き上がり、
熱いところを2切れほど。
そば屋のそれよりは薄味仕立てでもコクがある。
江戸前のすり身を使った玉子が好みだが
酒の肴には出汁巻きも悪くない。

にぎりに移行。
お好みの種を伝える前に細めの巻きものが出る。
つま大根を酢めしと海苔で巻いたものだが
これが「藤山」流だ。

小肌の酢と塩が強め。
多少トンガるが、むしろ存在感があっていい。
赤貝はこれ以上粒が大きくなると
大味になってしまうギリギリの線。
続いては先刻つまみでやった白いかの煮いか。
これが印籠詰めで来たが、身が肉厚にすぎて
もっと身の薄い槍いかのほうが向いている。
ふっくら柔らかの穴子と
南まぐろ赤身の即席づけで本日の打ち止め。

お口直しのトマトのおひたしをいただいて
お会計は2人で2万円弱。
この夜はこのあとイタリア料理店で飲む予定で
軽めに切り上げたが、まともに食べていたら
勘定は五割増しになったろう。
真っ当な鮨店と認定しうる店が
京橋にまた1軒増えて、収穫多き夜であった。

 
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2007年7月11日(水)

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