「一歩一歩、おいしさを探して」
J.C.オカザワの脚で綴ったダイアリー

第288回
谷中名物・メンチカツ

JR日暮里駅の北口を出たら
西に向かって歩いてゆくと
3分ほどで夕焼けだんだんに到着する。
その名の通り、この石段から眺める夕陽は
格別で郷愁を誘うものがある。

なぜかこの一帯には野良猫が多い。
そのほとんどが人懐っこくて
足元にスリスリ寄ってこられると
普通の神経の持ち主ならば、
悪い気持ちはしないものだ。

石段を降りると、目の前は狭く短い商店街。
これを谷中銀座と称する。
鮨屋・とんかつ屋・うどん屋・喫茶店・
鮮魚店・精肉店・惣菜屋などが
所狭しと軒を連ねている。

谷中銀座の突き当たり、
Tの字に交差する道が谷中よみせ通り。
ここにも大阪寿司やうなぎやフランス料理の
店々が並んで、下町っぽい雰囲気が流れている。
もっとも谷中・千駄木界隈を下町とは言わぬだろう。

よみせ通りから谷中銀座に戻って
この商店街の真ん中あたり。
数人の客が短い行列を作る精肉店が2軒ある。
「肉のサトー」と「肉のすずき」なのだが
この2軒のメンチカツが大人気。
テレビ番組で何度も紹介されているうちに
谷中名物・メンチカツという称号が
与えられてしまったらしいのだ。

さすがに夕暮れどきは
晩ごはんの買い物をする主婦の姿が目立つものの
オフアワーにはむしろ谷根千散策の
若いカップルや一人歩きの若者のほうが多い。
メンチカツを1つ2つと買い求めては
それをかじりながら散歩するのである。

店の佇まいは似ているものの微妙に異なって
「すずき」のほうに落ち着きが見られる。
売れ行きも若干こちらが上ではなかろうか。
何はともあれ、2軒のメンチを食べ比べてみた。

どちらも世間一般の肉屋さんのレベルを超えてはいる。
しかし、甲乙つけがたいというほどではない。
丙丁つけるというほどに低レベルではないので
乙丙つけがたいということで比較すると、
「すずき」が乙で「サトー」が丙。
プーンとくるメンチ特有の匂いと
肉汁の多さが決め手となった。
でも1度食べれば、それでいいやという印象。

ところ変わるが、JR神田駅から
淡路町方面に向かう途中に多町という町がある。
1丁目がないのに2丁目だけがあるヘンな町で
メインストリートの多町大通りに
鳥肉専門の「鳥正」が店を構えている。
この店のメンチコロッケが白眉。
鳥挽き肉&レバーが入り、
鳥油で揚げられて、あっさりとした美味しさ。
「鳥正」のメンチこそが
まぎれもない「甲」なのである。

 
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2007年8月8日(水)

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