「一歩一歩、おいしさを探して」
J.C.オカザワの脚で綴ったダイアリー

第303回
埼玉と新潟にフラレた夜 (その1)

世の中のほとんどの人々が
お盆休みの真っ只中という日に
モツ焼きを食べに行こうと
言い出した頓珍漢が現れたと思ったら
じゃあそうしようと
受け止めた奇特な呑気者も参入して
向かったのは北区東十条。

メンバーは大手商社の部長と出版社の編集者の計3人。
東十条駅南口の改札口で待ち合わせ、
そのまま駅前の坂道を下って行った。
目指すは焼きとんの名店「埼玉屋」。
ほんの数分でたどり着いたら
懸念した通り、お盆休みの貼り紙とご対面だ。
8割がたは駄目だろうと思っていたから
それほどの心理的ダメージはない。

そのままきびすを返して、今度は「新潟屋」に向かう。
これまた焼きとんが主力メニューの居酒屋だ。
案の定、こちらもシャッターを閉ざしていた。
ここまでは想定の範囲内ながら
埼玉と新潟、立て続けに2軒、袖にされてしまった。

さて、どうする? 電車で赤羽に回ろうか、
それとも中央商店街を突っ切って、十条まで歩こうか。
こういうときにツレの2人の意見を訊いても
埒が明かないので、自分で決断するほかはない。
結局、商店街を歩いて行った。

人気のうどん店「すみた」を左に見ながら
篠原演芸場に差し掛かる。
昭和26年にオープンした東京最古の大衆演劇場だ。
ゆえにこの十条中央商店街の俗称は演芸場通り。
演芸場を通り過ぎると、すぐに大衆酒場が1軒。
看板には「田や」とあった。
ガラス戸越しに垣間見える店内には
この商店街にふさわしいノスタルジックな
空気が流れているのが何となく判る。

このとき十条の「斎藤酒場」のことが
チラリと脳裏をかすめたものの
有名店だけに、十中八九は休業中だろう。
雰囲気の良さそうな「田や」にしても
どんなつまみが用意されているか判らず、
もしも外した場合は河岸を変えねばならない。
十条に流れるのはそれからでも遅くはない。

暖簾をくぐると右手にコの字形のカウンター。
左が入れ込みの板の間となっていた。
カウンターはコの字の縦の部分が極端に短く、
ペシャンコのコの字になっている。
接客にあたるのはオバさんが2人。
奥の調理場にはオジさんがいるようだ。

壁に貼られた品書きの数が半端ではない。
有り体に言えば、大衆酒場なのだが
基本的には秋田料理屋とのことだった。
したがって冬場には
ハタハタのしょっつる鍋に
地鶏のきりたんぽが主力メニューに
登場してくるのだそうだ。

          =つづく=

 
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2007年8月29日(水)

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