「一歩一歩、おいしさを探して」
J.C.オカザワの脚で綴ったダイアリー

第307回
春をひさぐ娘たち (その1) = 沖縄篇

フーゾクと戯れる趣味はないが
カフェーや遊郭の跡を訪ねる趣味がある。
東京では玉の井・鳩の街・洲崎あたりに
よどんでいる空気が気に入りで
月日とともにその場所から多くのものが
失われてゆく変貌振りがやるせない。
ヒマができると向島・深川方面には
自然と脚が向いてしまう。

沖縄で最初の夜を迎えた翌日。
午前中からバスに揺られて真栄原という街に出掛けた。
友人のM永クン曰く、
そこにはいまだに昔のカフェーが生き残っていて
盛んに営業中だと言う。
「そんな馬鹿な」と思いはしたが、
もし事実ならば、ぜひこの目で確かめてみたい。

那覇の国際通りから約30分、真栄原に着いた。
初めての沖縄のことで、まだ右も左も判らず、
例えば那覇の街の匂いを感じ取れるわけではないが
昨夜1泊した那覇と、今降り立った真栄原の間には
かなり異質なものが横たわっていることが判る。
時代の移ろいから置いてきぼりを食った街・真栄原。

いつもより人通りがまばらなようだ。
この日に判ったことだが
昨日から明日までの3日間は
沖縄の旧盆にあたっているのだった。
途中出会った店の看板に目を惹かれた。
「若鶏・アヒルの丸焼き エビスチキン 持ち帰り専門」
黄色地に赤い文字が映えて限りなくレトロ。
扱う商品はこの2品だけで、それぞれ1400円と3500円。

現役の遊郭の入り口に到着した。
真栄原社交街の看板があり、
そこをくぐって、なおも2〜3分歩くと
小さな店々が数軒現れ始める。
お盆のことでシャッターを下ろしているところが
ほとんどなのだが、その中にちらほらと
狭い間口を開けている店も少なくない。
そういう店では必ず1軒に1人ずつ、
若い娘が入り口に座って顔を見せているのである。
一心に携帯を操作していても店先を客が通ると
その都度、オモテを上げることを惜しまない。

時刻はまだ11時過ぎ。
この社交場は24時間営業なのだそうだ。
地域内のここかしこに社交街会による
社交街内撮影禁止のプラカード。
歩き回ると何となくどこかで見かけた光景ではある。
ついこの間まで伊勢佐木町にほど近い黄金町にあった
いかがわしいスポットをもうちょっと拡大させて
あっけらかんとさせた感じ。

娘たちの表情に暗さは微塵もない。
瞳に世を恨んだり、儚んだりする陰りというものが
まったく見当たらないのだ。
沖縄のまぶしい太陽のせいだろうか。

ふいに空腹感を覚えた。朝から飲まず食わずだ。
社交街入り口の道路をはさんだ向かい側に
「ますや」という食堂があったことを思い出す。
M永クンを置いて一足先に店に入り、
買い求めた食券はそば定食(700円)。
TVは世界陸上の女子100Mを中継していた。

              =つづく=

 
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2007年9月4日(火)

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