「一歩一歩、おいしさを探して」
J.C.オカザワの脚で綴ったダイアリー

第314
バッタリ出食わした料亭の三代目 (その1)

世の中に偶然は多々あるもの。
今回はそんなおハナシ。

8月の最終週のことである。
向島の料亭街の一角に
変わった店があると聞きつけて出掛けて行った。
なんでも昭和の匂いプンプンの
古い民家にて、酒は飲ますわ、
ラーメンは食べさせるわの珍店なのだそうだ。

このところ、9月初めからの欧州旅行を控えて
出掛ける前に片付けなければならないのは
留守中のこのコラムの原稿、
「ドクロ本第2弾」の締切り、
そのあとの「文豪たちの食跡(仮題)」の企画と
あわただしいことこの上ない。

その日も店の電話番号と住所だけはゲットしたものの、
予備知識ゼロのぶっつけ本番、出たとこ勝負。
念のために電話予約を入れ、マピオンの地図を
プリントアウトしてポケットにしまったのだった。
向島の料亭街はどの駅からもそこそこに歩く。
最寄り駅は東武伊勢崎線の曳舟だが
都営浅草線で一本の京成曳舟で下車する。

歩き始めた途端に雨が降り出した。
駅前のコンビニに直行して、雨傘を買い求める。
もちろん400円のビニール傘。
そのとき、待ち合わせの相方よりメールの着信。
仕事の都合により、30分ほど遅刻とのお達しだ。

まっ、いいでしょうと、再び歩く曳舟の町。
道すがら通り掛かったのが
たびたびお世話になっている「赤坂酒場」。
先着して飲みながら待つつもりだったが
急遽、予定を変更する。
飛んで火に入る夏の虫とはこのことで
どうしてこのモツ焼きの名店を見過ごせようか。
天が与えてくれた30分に感謝とばかり、即入店。

ビールの大瓶と一緒に注文したのは
シビレを塩で、オッパイをタレでの各1本。
シビレというのは仔牛の胸腺肉のこと。
フランス料理のリードヴォーだ。
オッパイは読んでそのまま、牝豚の乳房。
長めの串にそれぞれ3片ずつ串打ちされている。

噛むほどにコッテリとした旨みの増すシビレ。
歯切れのいい食感が命のオッパイ。
モツの醍醐味を満喫しての支払いは
たったの1100円也。安くてどうもスミマセン。
TVはヤワラちゃんの旦那の適時打で
ジャイアンツが追いついたか、逆転したかの
シーンを映していたが、遠くてよく判らん。

10分以上は歩いたろうか、
界隈は道が入り組んでいて
なかなか最短距離で目的地に着くことができない。
目指す「麺・酒処 らん亭」は
言問小学校の西隣り。これなら迷うこともあるまい。
途中「料亭きよし」の脇をすり抜けた。
一夜、この店に遊んだのは2年前の秋のこと。
当夜の芸妓の笑顔が鮮やかによみがえる。
いえいえ、宴のあとは浅草に流れましたから
向島で翌朝を迎えたわけではございません。

            =つづく=

 
←前回記事へ

2007年9月13日(木)

次回記事へ→
過去記事へ 中国株 起業 投資情報コラム「ハイハイQさんQさんデス」
ホーム
最新記事へ