「一歩一歩、おいしさを探して」
J.C.オカザワの脚で綴ったダイアリー

第323回
海の都の食物語 (その1)=欧州篇

リュブリャナで乗り遅れた轍は踏むまいと、
トリエステからの列車に乗り込み、ヴェネツィアへ。
年々、この海の都を訪れる観光客が増え続け、
なかなか島内にホテルを建設するわけにもいかず、
旅行者は常に宿の確保に難渋する状態が続いている。
本土側のメストレ駅前のホテル・プラザに投宿。

旅の荷を解き、電車で10分ほどの
ヴェネツィア・サンタルチア駅に向かう。
駅舎を出ると、すぐに目の前に広がる光景が
いつ見ても衝撃的だ。ここで一同最初の感激。
ヴェネツィアは1971、86、97年に次いで
今回が10年ぶり4度目の訪問となる。

10年のごぶさたとは言え、何度も歩いた街のこと、
旗振り役は先頭に立ち、
サンマルコ方面に向かって歩き出す。
狭い道が迷路のように走っていても
各所にリアルト橋とサンマルコ広場に向かうための
標識が設置されているので迷うことはない。

広場からドゥカーレ宮、溜め息の橋と回って
J.C.は夕食の店探し。旅の大きな楽しみの1つだ。
ガイドブックに載っている店はなるべく避けたい。
目についたのがホテル・ダニエリの裏手にある
「Antica Sacrestia(アンティカ・サクレスティア)」。
由緒ありそな古びた外観と内装に
供するのも古典的なクッチーナ・ヴェネツィアーナ。
そうかと思うとカジュアルな
ピッツェリアの反面を併せ持ったりもする。

実はこの店、21年前に1度訪れている。
そのときの印象がよかったことも覚えている。
幸い9席の1テーブルを作ってもらい入店。
リュブリャナにトリエステ、
いろいろあった一日を振り返りつつ、
モレッティのサン・スーシで乾杯。
すっきりタイプの美味しいビールだ。

ワインは白がトカイ・フリウラーノ'04年。
赤はバルバレスコのラ・カサ・イン・コッリーナ'97年。
殊に赤のくすんだ枯れ味にネッビオーロの
個性が強烈に出ていて、好みにピタリとハマッた。
ワインに造詣の深い御大ことS崎さんは
口切りのうちはやや不満のご様子だったが、
コッリーナがすぐに1本空き、
2本目に差し掛かる頃にはお気に入りの気配。
最年少のY子ちゃんもクイクイ飲んでいる。

1皿目のアンティパストは多彩な盛合わせ。
アーティチョークやフェンネルなど
イタリアを感じさせる野菜のほかに
ムール貝・小海老・たこに
干鱈のパテのマンテカートなどなど。
前菜を集めた料理ボードに並んでいた
グリーンピースとベーコンの炒め煮も追加する。
ピゼッリと呼ばれるこの地の緑豆は
日本のものと比べ物にならないほど美味なのだ。

ピッツァ・マルゲリータは生地に難点があり、
これは東京のほうがずっと美味しいものに出会える。
テーブルには、墨いかのヴェネツィア風(墨煮)、
オラータ(黒鯛)の網焼きと
黒モノ料理が次々に運ばれて来た。

          =つづく=

 
←前回記事へ

2007年9月26日(水)

次回記事へ→
過去記事へ 中国株 起業 投資情報コラム「ハイハイQさんQさんデス」
ホーム
最新記事へ