「一歩一歩、おいしさを探して」
J.C.オカザワの脚で綴ったダイアリー

第325回
海の都の食物語 (その3)=欧州篇

パスタとリゾットに満足した昼食後。
4人ずつ二手に分かれてのJ.C.組は
この日パリから合流する恋人を
迎える予定のM由子と途中で別れ、
日本人観光客とは無縁の
ユダヤ人街・ゲットーに向かった。
ちなみにM由子の恋人・H大は
現在パリの名門ホテルのムーリッスで
料理人として働く期待の星なのだ。

昼前あたりから携帯電話によるM由子とH大の
小さないさかいが耳に入っていたのだが、
どうやらH大はシャルル・ドゴールで
フライトに乗り遅れた様子だ。
何だかあちこちで乗り遅れの目立つ旅だこと。

ユダヤ人街・ゲットーを歩いていると
どことなく懐かしさがこみ上げてくる。
このクソ暑い中、モミアゲをクルクルに伸ばし、
黒い帽子と上着姿のユダヤ系の人々が
ニューヨークでなじんでいた光景を呼び起こすのだ。
小さな広場のカフェでのんびりとお茶を飲む。

その日の晩餐はヴェネツィアの街を
さまよって探し当てたリストランテ、
「Centrale(チェントラーレ)」に白羽の矢を立てた。
この街には場違いなくらいにモダンでシックな店だが
店先のメニューボードにこの内容ならば!
という確信を得たのだった。

あんこうのグラタン、仔豚のロースト、
牛フィレのシャトーブリアンなどの
ラインナップに非凡さを感じ、
高額店にもかかわらず、一も二もなく決めた。

J.C.が一心不乱にメニューに没頭しているそのとき、
同行のI田のお母さんが素っ頓狂な叫び声。
振り向くと10メートルほど先の小橋の上で
何やら興奮も露わに、手招きしているではないか。
あわてて駆けつけると、その橋の下を
4時間ほど前に別れた別働隊の4人組が
ゴンドラに揺られ、どんぶらこ、どんぶらこと
小運河の向こうに遠ざかってゆくのでした。
さして広くはないヴェネツィアだとて
こういう偶然は滅多にあるものではない。

パリから1便遅れて到着した若き料理人、
H大もジョインした夕食は
そんなハプニングもあって、食卓の話題に事欠かかず、
あちらこちらで笑いが絶えない。
当夜の白ワインはドメーヌ・ルールの
クローズ・エルミタージュ'97年。
S崎御大は毎度、白の選択にはウルサい。
J.C.の選んだ赤はピオ・チェザーレのバローロ'00年。
つい本場ヴェネトよりピエモンテに目がいってしまう。

突き出し代わりのぬるいヴィシソワーズのあとは
たこ&めかじきのカルパッチョ、ポルチーニの網焼き、
大ひらめの網焼きと続き、そして上記のトリオの
あんこう・仔豚・シャトーブリアンをきれいに平らげた。
満腹感と満足感を手みやげにぶら下げて
ヴァポレットの停船場に向かう9人であった。

 
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2007年9月28日(金)

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