「一歩一歩、おいしさを探して」
J.C.オカザワの脚で綴ったダイアリー

第327回
ヘンなイタリア人現る (その1)=欧州篇

ほかの連中は出掛けにチェックアウトを済ませている。
バタバタしていて、そのまま出てきたJ.C.は
12時前にホテルへトンボ帰りをせにゃならぬ。
戻ってみると午前中休んでいたK石クンが
ロビーのソファーで疲れた様子。
この人はいつ見ても、ほとんどの場合、疲れている。
「朝メシ食った?」 「食ってない」
「昼メシ食う?」 「食欲ない」
「ラーメンでも食うか?」 「エッ?いいねェ」

メストレの街はヴェネツィアで働く労働者たちの
言わば、ベッドタウン。
中国系やインド系住民の数も多い。
ホテル・プラザの裏手には2軒の中華料理屋があって
みなが戻る前に腹ごしらえと、そのうちの1軒へ。

いかにも料理のまずそうな薄暗い店の名は「東方」。
イタリアビールのナストロ・アズーロの大瓶(66cl)を
お願いするも、元気のない相棒のK石は無難に中国茶。
スープそばの排骨麺と中華風スパゲッティと
焼き餃子を1つずつ注文した。
餃子だけが2.5ユーロで、あとはビールも麺類も3.5ユーロ。
わりと大雑把な価格設定だ。
排骨麺は麺がクタクタながら、味付けはそこそこで
餃子にも及第点が付けられる。

中華風スパゲッティというのは焼きそばのこと。
しかし似て非なるものとはこのことで
見た目はスパゲッティ・ボロネーゼみたいだが
ニンニクと酢がたっぷり。
味も匂いも異様なシロモノに仕上がっていた。

トリノに向かう列車はガラガラ。
眠りたいものは座席を2席占有して、ひたすら夢の中。
J.C.はあまり乗り物の中で寝られるほうではない。
隣りの車両がヨーロッパならではのコンパートメント。
そちらに移動し、車窓やガイドブックを眺めていた。

そこへ突如ヘンなイタリア人が飛び込んできた。
目の前のイタリア女性と親しげに話し始める。
にわかに周りが騒がしくなり、今が潮時と
みなのいる車両に戻ろうとするとき、
いきなり声を掛けられた。
「貴方は日本人ですか? 私は中島みゆきのファンです!」
それも比較的流暢な日本語で。

その場はそれだけで収まったのだが、
ものの30分としないうちに、くだんのイタリア人が
こちらの車両に乗り移って来るではないか。
そして仲間のA子嬢の隣りに居座り、
なんだかんだと胡散臭い話をしている様子。
どうやら慈善団体の寄付金を募っているようだ。
途中、中島みゆきの「時代」や「わかれうた」を
口ずさんだりもしながら、
とうとうA子から1ユーロをせしめてしまった。

あとはあちこちの座席をハシゴして
ほかの乗客からイヤな顔をされている。
若いイタリア女性の脇に移ったとき、
彼の持ち歩くバスケットの中身がふいに現れた。
ハンカチーフが掛かっていて気づかなかったが
開けてビックリ玉手箱。
1羽のうさぎがヒョッコリ顔を見せたのだった。
なんじゃ、こりゃあ!

         =つづく=

 
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2007年10月2日(火)

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