「一歩一歩、おいしさを探して」
J.C.オカザワの脚で綴ったダイアリー

第330回
食の都・リヨンへ (その2)=欧州篇

ランチ後、旧市街をぶらついたのち、
フルヴィエールの丘に上る仲間たちと別れて
独りソーヌ川を渡る。
ちょうど今から100年前、
永井荷風がこのリヨンに赴任していた。
横浜正金銀行(現東京三菱UFJ銀行)リヨン支店に
8ヶ月だけ勤めていたのだ。
この旅では彼の足跡をたどるのも1つの目的。

東京ならば中央通りに匹敵する
レピュブリック通りを1本入ったところに
支店の入っていた建物がそのまま残っていた。
続いてローヌ川を東に渡り、
荷風の下宿(と言っても食事付きアパルトマン)を
この目に焼き付けてきた。
こんなことができるのも、みな加太宏邦氏が著した
「荷風のリヨン」(白水社)のおかげ。
加太氏にはあらためて感謝したい。

その夜はミシュラン二つ星の「Leon de Lyon」に赴く。
店内には名立たる訪問者のスナップ写真が誇らしげ。
シラク・クリントン・橋本龍太郎、
かっての大統領や首相の揃い踏みだ。

マックス8席の大テーブルに何とか9席作ってもらい、
何やら晩餐会といった雰囲気に満ちてくる。
シャンパーニュで乾杯し、
ワインはともに地元を代表するギガルの銘酒。
白がコンドリュー、赤はコート・ロティで
どちらもヴィンテージは2001年。
と、ここいらあたりまではよかった。

相当なボリュームのアミューズ盛合わせに
目を輝かす若手がいると思えば、
ゲンナリしてしまう中年もいる。
体調を崩しつつあったI田・Iアの熟年コンビは
この時点で早くも食欲を失い、ダウン寸前。
ちょうど旅の疲れがピークに達する頃で、
重い食事と不足がちの睡眠時間が
ダブルパンチとなって、疲れた体を襲うのだ。

かくいうJ.C.もこの夜のディナーが一番キツかった。
それにしても長老格の御大こと、S崎さんはゲンキだ。
歳からしてありえないのだが、
軍隊生活で鍛えられたが如くにご壮健。

前菜の生いか香草パン粉詰めが不出来。
メニューに記載がなかったので
まさか生で来るとは思いもよらなかった。
鮮魚は日本のレベルにほど遠い。
主菜の仔うさぎのローストは繊細さに欠けるものの、
フォワ(肝臓)とロニョン(腎臓)が添えられて
この小さな賢者の贈り物が図らずも
コート・ロティとアンサンブルを奏でてくれた。

両隣りからのおすそ分け、子鳩と仔牛はやはりイマイチ。
これが2つ星とは思えぬほどに精彩がない。
雑味多くして深味に乏しい。
デセールのソルベを二口ほど味わって、
夜の街をホテルへと歩く。

この後、部屋を確保していないJ.C.は再び夜の街へ。
ラグビーのW杯のせいで、どこのホテルも満室状態。
幸い2軒目のホテル・カールトンで部屋を見つけたが
残った1室はジュニア・スイートとまったくの分不相応。
1泊200ユーロを超える部屋に独りきり。
枕を涙で濡らすわが身を一体何に例えよう。

 
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2007年10月5日(金)

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