「一歩一歩、おいしさを探して」
J.C.オカザワの脚で綴ったダイアリー

第331
幻のロマネ・コンティ (その1)=欧州篇

30年ぶりのリヨンだったが
印象は好ましいものではなかった。
永井荷風もずっとこの街にくすぶり続けるよりは
おのれの身勝手やわがままを承知しながらも
早期に銀行を辞してパリに出たかったのだろう。

リヨンの街に別れを告げて
チャーターしたバスに乗り、ブルゴーニュを目指す。
Iアさんの体調が元に戻ったのはよかったのだが
副産物としてのにぎやかさも戻ってしまった。
I田さんは相変わらず絶不調、バスの中で半死半生。
余命いくばくもなさそうな表情が哀れを誘う。

そこへいくってぇと、元気いっぱいの若手3人娘は
車窓の景色なんぞ、どこ吹く風もいいところ。
ただひたすらに眠りこけている。
惰眠をむさぼるとはこのことで
まったく親の顔を見てみたいもんだ。
もっともこの快眠こそが
活力の源泉となっていることに疑いの余地はない。

ボジョレーのシャトー・ド・ピエローに立ち寄ったあと、
ボーヌでの昼食は、数ヶ月前に鳴り物入りで開店した
「Loiseau des Vignes(ロワゾー・デ・ヴィーニュ)」。
途中、フランスの労働基準法にのっとって
バスの運転手が初老のアランから
中年のジャン・ポールに交代している。
われわれとしてみれば、ドロンからベルモンドへの
豪華リレーに不満のあろうハズがない。

「Loiseau des Vignes」はドミニク・ロワゾーが
念願かなってブルゴーニュに開いた店で
のどかなるこの町にあっては少々異質の
モダンな雰囲気いっぱいのレストラン。
ワインがすべてグラス売りというのが斬新だ。
赤だけでもザッと数えて26種類もあった。

ジョルジュ・ルミエの
シャンボル・ミュジニー'05年が17ユーロ、
アルベール・ビショの
シャルム・シャンベルタン'00年が21ユーロ、
といった具合で容量は120cc。
ほかに80ccのお試しサイズあり。
シャルムの香りが卓上を席巻しつくして
さすがにグラン・クリュの面目躍如だ。

ランチのプリフィクスは
前菜+主菜or主菜+デセールが各23ユーロ。
前菜+主菜+デセールで28ユーロ。
ご他聞にもれず3皿コースがお食べ得。
ロワゾーお得意のアミューズ、
チーズのグジェールで始まり、
選んだ3皿コースはかくの如し。
アヴォカドをあしらった小海老のサラダ、
ほろほろ鳥の黒ビール煮、
ショコラ&バナナのタルトレット。
前夜の料理とは、きめこまやかさが格段に違う。

食後はワインでも名高いオスピス・ド・ボーヌの
オテル・デューを興味深く見学し、
いよいよロマネ・コンティの畑へと向かう一同だった。
ところがである。ロマネの畑を目前にしてである。
後ろ髪を引かれる思いで
バスを降りてゆく悲劇のヒーローが独りいた。

             =つづく=

 
←前回記事へ

2007年10月8日(月)

次回記事へ→
過去記事へ 中国株 起業 投資情報コラム「ハイハイQさんQさんデス」
ホーム
最新記事へ