「一歩一歩、おいしさを探して」
J.C.オカザワの脚で綴ったダイアリー

第333回
裏切りのディジョン =欧州篇

ブルゴーニュはシャニーの
ミシュラン三つ星「Lameloise」。
ことさら美味しかった数種類のパンを包んでもらい、
ホテルでダウンしているI田さんのためにお持ち帰り。
その夜は全員朝早くから動きっ放しで
それぞれに疲労の色濃く、帰宿後はバタンキュー。

翌朝は早く目覚めてシャワーを浴びると
シャワーのお湯がしょっぱい。
岩塩でも溶け出しているのかしら・・・。
朝食の食卓に向かい、エスプレッソ以外は
あまり口にしないコーヒーをカフェオレにしてみると
驚いたことに、このコーヒーもまたしょっぱい。
この地方ではいつもそうなのか、
たまたまだったのか判然としないが
クレームもつけずに、テオレに切り替えた。

クロワッサンのほかにバゲットが用意され、
エシレのバターが各テーブルに1つずつ。
さすがにシャトーホテルだけのことはある。
軽くスモークした生ハムとソーセージ、
それにスクランブルドエッグで
わりとしっかりめのプティデジュネとなった。
珍しくもあんずのコンポートや
アカシヤの蜂蜜にまで手を出したのだった。

前日に引き続き、この日もバスで出発。
行く先はマスタードで有名な美食の街・ディジョン。
食前酒キールの生みの親、
キャノン・フェリックス・キールが
20世紀初めに市長を務めていた街である。

「Le Grilloure(ル・グリヨール)」にてデジュネ。
その名の通りにグリル料理の専門店。
定番の網焼きのほか、ピッツァも人気とのこと。
フランスでは真っ当なピッツァとパスタに
出会うことはないので、注文することはまずない。
かなりの大箱にもかかわらず、
店内は近隣のビジネスマンのパワーランチで
大盛況の様相を呈していた。

本場ディジョンに来たのだからと
前菜にはメンバーのほとんどがエスカルゴを所望。
ところがこれがちっとも美味しくない。
東京のデパ地下のフォションか
ホテル・オークラあたりで買い求めたものを
オーヴンで焼いたほうがマシなくらいだ。

メインの網焼きにも失望感が拡がった。
タイム風味の仔羊のブロシェットは
もも肉がパサパサで硬く、どうにもならないシロモノ。
チキンも仔羊同様に、その肉汁を失っていた。
トマトソースのタリアテッレはソースがゆるい上に
ゆですぎていて、離乳食みたいにクッタクタ。
歯のない人でも食べられるくらいだ。

極め付きは帆立のポワレで
肝心の帆立がまったくの鮮度落ち。
いくら海から遠いディジョンでも、これはあんまり。
たった1軒の店の印象で
ディジョン全体を糾弾するわけにもいくまいが
これほどの客が押しかけているのだから
ディジョン市民の味覚も推して知るべしだろう。
無残にも美食の街にこめた期待は裏切られたのだった。

 
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2007年10月10日(水)

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