「一歩一歩、おいしさを探して」
J.C.オカザワの脚で綴ったダイアリー

第338回
過大評価のミシュラン二つ星 =欧州篇

独りサン・マルタン運河を歩んだ日の夜は
M由子の恋人で、ホテル・ムーリッスの
厨房で働くH大が予約を取っておいてくれた
ミシュラン二つ星の
「Helene Darroze(エレーヌ・ダローズ)」へ。
土曜の夜なのにゴールデン・タイムは満席で
抑えた予約は2回転目の21時半スタート。
肝心のH大は仕事が忙しくて参加できず、
9人が2テーブルに分かれてのディナーとなった。

最初の飲みものは例によってシャンパーニュの
モエ・エ・シャンドン・ブリュ・ロワイヤルSA。
白ワインはシャトー・カルボーニュ A・ペラン’05年。
赤がシャトー・ローザン・セグラ・
ドゥジエーム・クリュ’04年 ジョン・コラサ。
値段はそれぞれ、115、110、150ユーロ。
今宵のワインは珍しくもボルドーでいった。

アミューズは2種類。
仏南西部のリゴワ産ジャンボン・クリュ(生ハム)と
栗のムースのクレーム・ブリュレの青りんごソルベ乗せ。
クレーム・ブリュレが秀逸で期待が高まる。
だが、よかったのはここまでだった。

ブルー・オマールのすももソースは
標準以上のデキではあった。
最近はペッシェ・ド・ヴィーニュ(枝の桃)と
呼ばれるすももを使うシェフが増えている。
添えられたサリコーン(浜辺の海藻)が珍しい。

アンチョヴィと茄子のラヴィオリは不始末の極み。
ラヴィオリの厚い皮がモコモコするし、
ぬるいトマトソースとアンチョヴィの相性が悪く、
生臭みが出てしまって、手に負えるものではない。
しかもそれぞれのラヴィオリにご丁寧にも
1枚ずつ乗せられた生ハムの意味が理解不能。
蒸し餃子の上にまぐろの刺身を乗せるようなものだ。
アミューズと重複したのも大きな減点材料。

メニューにはリゾットも顔を出していて
イタリア料理への意識過剰が露わになっている。
もちろんイタリア本土のレベルには遠く及ばない。
ミシュランは何を根拠に
この女性シェフに二つ星を与えたのだろう。
パリのフランス料理の将来は暗い。

ランド産プーラルド(肥育鶏)のロティは
その巨体を見ただけでお腹がいっぱい。
両隣りにおすそ分けしても皿に余り、半分以上残す。
チャボのように小柄なコクレを使ってほしかった。
ソースも塩辛く、しょっぱさが付合わせにまで及んで
野菜が箸休めの役目を果たしえない不首尾。

コション(仔豚)のアンサンブルは
ブーダン・ノワールと骨付きチョップ、
もも肉煮込みにロール巻きと、
変化に富んでもソースが1種類のみ。
食べ初めて数分後には飽きてくる。

アルマニャックの品揃えが自慢の店なので
食後、1990年ものを1杯所望するも
アルコールがとんがって、ちっとも楽しめなかった。
総合的に判断してこの店は
一つ星にあと一歩といったところが適正評価だ。
お願いしますよ、ミシュランさん!

 
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2007年10月17日(水)

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