「一歩一歩、おいしさを探して」
J.C.オカザワの脚で綴ったダイアリー

第349回
勲章をもらったフレンチシェフ

ホテル・ニューオータニ大阪の
フレンチレストラン「桜」の総料理長にして
東京・銀座の同じく仏料理店、
「ル・シズィエム・サンス」の
プロデューサーを務める
ドミニク・コルビ氏がフランス政府より、
フランス食文化の普及における功績を認められ、
農事功労章シュヴァリエを受章した。

受章記念の午餐会に招かれて
「ル・シズィエム・サンス」に赴く。
彼の料理は何度もいただいているが
素材の持ち味を引き出すだけでなく、
その食材にどのような装いを施すと
ベスト・ルッキングになりうるかという、
言わば卓上のモードの追求が大きな特徴。
どの皿もファッションを競い合っていて
観ているだけでも楽しく、味わうともっと楽しい。

ロゼのシャンパーニュのあと、
白はリースリング、赤はクロズ・エルミタージュ。
昼なのでアルコールの摂取は控えめにと思いつつも
ついつい愚かな右手がグラスにのびてしまう。
もういいや、今日は飲んじゃおう!

アミューズはスモークサーモンのファルシ。
無難なスタートを切った。
オードヴルが関鯖のマリネのタルト仕立て。
ひよこ豆のガレットとモッツァレッラとトマトが
白ワインでマリネされた関鯖と一緒にミルフィーユ状。
オリーヴのソルベがちょこんと乗って
ソースは緑のオリーヴのタプナード。
良質の食材がそれぞれに協調し合い、
アンサンブルを奏でている。
ヒヤッとくるソルベが絶妙のアクセント。

続いてのスープはマロンと香草のカプチーノ仕立て。
栗の風味が鼻腔をくすぐり、
♪ 今はもう秋、誰も文句を言わない美味 ♪
(トワ・エ・モワはどうしているんだろう?)
滅多にいただかないクリーム系のスープだが
こんな逸品にたまたま出会うと
考えを改めねばと思ってしまう。

そして本日のベストがメインディッシュの
シャラン産鴨胸肉のロティだ。
メニューには日本語で鴨胸肉と記されているが
仏語表記ではカヌトン。
カナールではなくカヌトン、いわゆる子鴨である。
これにサヴォイキャベツのファルシが添えられていた。

ちょっと見はヌーヴェル・シノワを思わせる。
中華のローストダックと韮饅頭にそっくりなのだ。
フェンネルに混じり、スターアニス(八角)も
香り立つのだからなおさらだ。
滋味あふれる胸肉は食感までもが快適だった。
近年食べた鴨料理では断然トップで
ブルゴーニュはシャニーの三つ星、
「Lameloise(ラムロワーズ)」の上をいった。
今月発売のミシュラン東京版で
「星」が確実視されているが、さもありなん。

デセールはオレンジ&グレナデンのクレームと
ホワイトチョコ&オレンジのグラッスの盛合わせ。
薫り高いカフェとともに味わって
幸せな時間にピリオドを打つ。

 
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2007年11月1日(木)

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