「一歩一歩、おいしさを探して」
J.C.オカザワの脚で綴ったダイアリー

第351回
法善寺横丁のおでんと燗酒

鶴橋でオリジナルにぎりの数々を味わったあと、
地下鉄で難波に出て、そこからブラブラと
心斎橋方面に歩いて行った。
ふと思い出したのが十数年前に1度訪れたおでん屋。
奇しくもそのときの相方はこの夜と同じS原クン。
意見の一致を見て法善寺横丁に向かった。

横丁は2度の火災にあって
少々雰囲気を異にしているが、
暗いせいか、それほどの変化を感じない。
ただし、当世風のモダンな飲食店が幅を利かせてしまい、
情緒が薄れた感は否めない。

天龍山法善寺には参詣の人影が絶えない。
コンパクトなお寺さんにも立派な山号があるもので
ご本尊の阿弥陀如来よりも
境内の水掛不動がつとに有名。

その脇のぜんざい屋「夫婦善哉」が
昔、森繁主演の映画で観たものとは裏腹に
前面に押し出た商業主義が胡散臭いことこの上ない。
お不動さんは変わらぬのに
両者のギャップは開いてゆくばかりだ。

法善寺のすぐそばにある「おかめ」の暖簾をくぐる。
1度きりしかおジャマしていないが
ハッキリと見覚えのある風景が広がった。
と言ってもカウンターが1本あるだけだ。
以前いた女将は最近は店に出ていないという。

好みの清酒・剣菱を熱めにつけてもらい、
壁の品書きに目をやると、
当て字の漢字群が目に飛び込んできた。
 男刷毛 400円    美以留 500円
 御出運 200円より  津毛者 300円
 夜ッ子 400円
といった塩梅。

水茄子ときゅうりのぬか漬けに
たら子半腹を、生とちょい焼き半々でお願いしておき、
さっそくのおでんは牛スジと鯨のコロ。
「郷に入ったら、郷に従え」の喩え通りに
大阪らしさあふれるタネから攻め立てるのが定石。

剣菱から、これも好きな銘柄の賀茂鶴に切り替える。
お燗の勘所を押さえた店で
酒を酌み交わすことのできるうれしさに
アゴまでとっぷり浸っていると、
ほどよく酔いが回ったせいか
藤島桓夫が歌った往年のヒット歌謡曲、
「月の法善寺横丁」のメロディーが浮かんできた。

♪ お銚子一本 カラシをといて
     スジに塗るのも 浪花の所業
  待っててコロさん 美味しいだろが
     あ〜あ〜 熱いおでんが 
  涙ににじむ法善寺 今宵十月十三夜 ♪

本当に10月13日の夜のことでした。
涙がにじんだのは、カラシが利いただけでした。
浪花(なにわ)ともあれ、
本日はおやじギャグを聞いていただき、
まことにありがとうございました。

 
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2007年11月5日(月)

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