「一歩一歩、おいしさを探して」
J.C.オカザワの脚で綴ったダイアリー

第353回
「蓬莱軒」の昔恋しいラーメン

南阿佐ヶ谷は杉並区役所ウラの「蓬莱軒」。
地元では根強い人気を誇る地域密着型の
気の置けない町の中華屋さんは
麺類とごはんモノが中心で
手の込んだ料理が出てくるわけではない。
中華料理店ではなく、中華屋さんたる所以だ。

5年前に初めて立ち寄って、
ツルツルとやったラーメンが忘れえぬ味。
まだ、サッポロラーメンもなければ、
博多の豚骨や喜多方ラーメンも
東京の街に存在しなかった頃の
典型的な中華そばに、帰らぬ昔が恋しかった。

あの時代はラーメンと言えば、醤油味一辺倒。
塩や味噌はなく、塩味スープでいきたい人は
タンメンか五目そばを注文していた。
札幌生まれの味噌ラーメンが
東京に普及し始めたのは
1970年代に入ってからのことだ。

久々の「蓬莱軒」のラーメンは530円と値段据え置き。
やや濃い目の醤油スープは浮き油も多め。
ちょいとしょっぱいが、シツコくはない。
化学調味料を感じるものの、許容範囲に収まっている。

極細のちぢれ麺はツルリとした舌ざわりながら
噛み始めると、独特の粉っぽさが
歯を押し返して快い食感を生み出す。
しかも、細いくせにそこそこ頑張って
やすやすとはノビたりしないところがエラい。

ドンブリを飾るのは、肩ロースのチャーシュー・
シナチク・なると・小松菜。
チャーシューは小ぶりでも肉厚。
シナチクとなるとはそれなりながら、
小松菜のシャッキリ感がよいアクセントだ。

最近はほうれん草や小松菜の青みを省いたり、
わかめで代用する店が多い中、
こういうラーメンに出会うと心がホッと和む。
「ALWAYS 続・三丁目の夕日」が公開中だが
もしも頼んだラーメンに青みがなかったら
茶川龍之介先生だって黙っちゃいないだろう。
昭和30年代のラーメンに
青みは必要欠くべからざるものだった。

懐かしのラーメンを提供し続ける「蓬莱軒」。
それならタンメンも昔恋しい味なのでは?
と思って、再びやって来た南阿佐ヶ谷。
680円のそれには、ラーメン以上に油っ気を感じた。
豚肉・きくらげ・野菜を炒めるわけだから
当たり前だが、もうちょっとサラリとしたのが好みだ。
それよりもタンメンになると、
さしものしっかり極細麺が高熱に太刀打ちできず、
アッと言う間にグロッギーとなってノビちゃった。
やはりこの店はラーメンに尽きる。

帰りがけに商店街のだんご屋さん「マスヤ」で
きわめて珍しいものを発見。
きび餅・あわ餅・豆餅(赤えんどう)だ。
豆餅はともかく、きびとあわには初めてお目に掛かる。
どうせ独りじゃ食べられないのに
悪いクセで3種類すべて買い求めてしまった。
腹ごなしの散歩に高円寺方面へ歩き出しながら
早くも後悔し始める自分に、つけるクスリはなさそうだ。

 
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2007年11月7日(水)

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