「一歩一歩、おいしさを探して」
J.C.オカザワの脚で綴ったダイアリー

第358回
突然の閉店のため マボロシの原稿となる

JR神田駅東口に近いとんかつ屋の
「三新」が突如閉店してしまった。
ただ今、読者プレゼントご応募受付中の
新著「古き良き東京を食べる」でも
名店二百選に選出したのに非常に残念。

晶文社に「三新」の原稿を送ったあと、
たまたま編集担当の方から
閉店の情報をもらったのだった。
まだ間に合ったのでほかの店に差し替えたのだが、
マボロシになってしまった原稿を
ここで紹介させていただき、
今は無き名店にたむけるレクイエムとしたい。

■「三新」の目玉は上ロース
一つ星

とんかつはラードでカラリと揚げ切るのが一番。
「三新」のとんかつは余計な技巧をこらさぬ直球勝負で
シンプルな美味しさが際立っている。

カウンター席から鍋の中をのぞき見ると、
目黒の「とんき」の如くに黒ずむ揚げ油。
これには一瞬たじろいでしまう。
当然運ばれて来るとんかつはかなり色黒。
それでもキッチリ揚がった豚肉はとてもジューシーだ。
見るからに男っぽいとんかつが自慢の店に
女性客の姿はほんの数えるほど。

メニューは昼も夜も、並ロース(850円)・
上ロース(950円)・ヒレ(1250円)の3品のみ。
初めて訪れた際に
「三新の目玉は上ロースカツです」の
貼り紙をテレビの下に見つけ、
無条件でその目玉を注文してハマッた。
こういうロースカツにはしばらくお目に
掛かっていないような気がした。

昔懐かしの味と香りに
ノスタルジックな店内の雰囲気も相まって
一瞬のうちにタイムスリップ。
以来ちょくちょく出向き、並ロースもヒレも試した。
ヒレの水準も高いものがあったが少々割高。

やはりお店は嘘を申しません。
値段と仕上がりを考慮して
イチ推しが上ロースであることに間違いなく、
そのための一ツ星だ。

難点も散見され、
炊き上がりに出来不出来の差が激しいごはん。
いつも具がつまみ菜一辺倒の味噌汁。
白菜かキャベツをモミモミしただけのおざなりな新香。
このあたりが改善されたら文句なしなのだが・・・。

と、こんな原稿だった。
一時代前の、どこにでもある町の
とんかつ屋といった感じの店だったが、
あの純朴なロースカツが妙に懐かしい。
オジさんが3人に、オバさんが2人だったかな?
今あの人たちは、どこで何をしているのだろう。

 
←前回記事へ

2007年11月14日(水)

次回記事へ→
過去記事へ 中国株 起業 投資情報コラム「ハイハイQさんQさんデス」
ホーム
最新記事へ