「一歩一歩、おいしさを探して」
J.C.オカザワの脚で綴ったダイアリー

第365回
洋食ばかりを食べている

最近、ヤケに洋食ばかりを食べている。
次著の取材を兼ねているためだが、
文人の行きつけた店を追跡していると
洋食店やうなぎ屋に遭遇する頻度が高い。

対象とする人物を故人に限定しているので
和食系の老舗が多くなってしまい、
ここ数週間の間に、森鴎外の「上野精養軒」、
夏目漱石の「松栄亭」、川端康成の「銀座キャンドル」、
太宰治の「資生堂パーラー」、池波正太郎の「煉瓦亭」、
向田邦子の「芳味亭」、ザッとこんな具合だ。

すでに何度も訪問している店ばかりだが
中には2年ほどご無沙汰しているところもあり、
この機会に洗いざらい復習することにした。
そうなるとついでに
対象外の店の最新情報もほしくなってしまい、
日本橋「たいめいけん」、神保町「七條」、
麻布十番「エドヤ」、根岸「香味屋」、
浅草「リスボン」あたりにも出没してきた。

銀座・三越裏の「みかわや本店」もその一環。
特にこの店は余命いくばくもないので行きたかった。
三越の増床のために、来春には閉店してしまうのだ。
ここは1階よりも2階席がおすすめ。
北と西に向かって2面の窓が開いているのが
快適な居心地を生んでいる。
いかにも老舗の洋食屋といった雰囲気の中で
ポークカツレツやビーフシチューに
舌鼓を打つシアワセを噛みしめたい。

その日、友人と2人で分け合った料理は
かきフライ・蟹コロッケ・ハヤシライスの3品。
それにお約束のお新香が添えられてくる。
きゅうり・茄子・白菜の定番のほかに
柚子風味の山芋まで現れた。
おかげでライスの美味しさが倍増する。

かきは三陸産の中粒サイズが7個付け。
付合せの生野菜が多種多彩で
コンビネーションサラダの様を呈している。
タルタルソースが秀逸だった。
ピクルス・オニオン・玉子・オイル・
ヴィネガーのバランスがとてもよい。
タルタルで半分、イカリソースのウスターと
練り辛子で半分、アクセントを付けて味わった。

たらば蟹がみっしり詰まった蟹コロッケもなかなか。
かきフライのボリュームに比べて
少々ものたりなさが残るが、
蟹は高価な食材だから、納得しておこう。
付合わせの温野菜が丁寧で
にんじん&かぼちゃのグラッセは
バターの香りいっぱいの王道をゆくものだった。

ハヤシライスは牛のもも肉を使っているようだ。
フィレの柔らかさはなくとも
噛み応えのある肉も悪くない。
玉ねぎの火の通しの塩梅よく、
「煉瓦亭」のハヤシよりも好みだ。

何度も足を運んだ「みかわや本店」だが
おそらくこれが見納めとなろう。
ここで食事をともにした友人たちの顔が
つぎつぎに浮かんでくる。
好きなレストランでした。
たくさんの思い出をありがとう。

 
←前回記事へ

2007年11月23日(金)

次回記事へ→
過去記事へ 中国株 起業 投資情報コラム「ハイハイQさんQさんデス」
ホーム
最新記事へ