「一歩一歩、おいしさを探して」
J.C.オカザワの脚で綴ったダイアリー

第392回
ふぐを食べるなら 絶対ここだ!(その1)

浅草の観音裏から南千住に抜けてゆく途中に
日雇い労働者の町として知られた山谷がある。
かれこれ40年ほど前に
フォークシンガーの岡林信康が

 ♪ 今日の仕事はつらかった
     あとは焼酎をあおるだけ ♪

と歌った「山谷ブルース」の、あの山谷。

山谷は現在の地番でいうと
台東区・日本堤&清川にまたがっているが
その隣りに橋場という町がある。
清川と橋場の間を商店街が軒を連ね、
いなり寿司で有名な「松むら」が
暖簾を掲げていたりもしている。
この町にすばらしい店があると聞きつけた。

浅草ビューホテルのそばに
浅草には数少ない真っ当なバーがある。
このコラムにも何回か登場している
「バーリィ浅草」だが
チーフバーテンダーのK村さんから
もたらされた情報だから、信憑性は非常に高い。

何でも、料理は割烹クラスで
値段のほうは居酒屋並みだという。
確かに浅草の奥地には掘り出し物が
潜んでいそうな気がしないでもないが
世の中、そんなにうまいハナシが
そうそうあるものではない。

百聞は一見にしかず。
その「山海(さんかい)」に乗り込んだ。
この夜は飲みものも、いろいろ試そうと
ビール・ひれ酒・生レモンサワーと飲み次いだ。
突き出しの胡麻豆腐には茄子が忍ばせてあり、
早くもタダ者ではない、その片鱗を垣間見せる。
居酒屋のシゴトでないことは明白だ。

一概には言えないが、ヒドい居酒屋は
愚にもつかないお通しに、チャージをしてくる。
あんなものを食べさせられるのなら
こちらのほうがお金をもらいたいくらい。
その点、「山海」は期待を抱かせてくれた。

香川産のしゃこはまずまずながら、ニセわさびが残念。
まぐろ中落ちも値段が値段だからそれなり。
天然ではないが、とらふぐ刺しには
じゅうぶんに合格点を付けられる。

当夜のベストは、きんきの煮付けだった。
立派なボディは身肉がはち切れんばかり。
煮汁の味付けもよく、肝は小さいものの、
目玉の周りをパクリとやってご満悦。
豆腐・絹さや・ごぼうの添え物トリオも万全だ。

期待が大きすぎて、感動にはいたらなかったが、
この値段でこの料理は、くだんのキャッチコピーも
あながち的外れではない。
K村さんには、わさびが惜しいと伝えておいた。

後日、飲み仲間が4人揃って忘年会。
ふとこの「山海」のことを思い出し、
ふぐちりか、あんこう鍋でも囲もうと再訪する。
今回は本わさびと鮫皮のおろし板を持参した。

           =つづく=

 
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2008年1月2日(水)

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