「一歩一歩、おいしさを探して」
J.C.オカザワの脚で綴ったダイアリー

第400回
「幸貴」のラーメンにハマッてる

ホームグラウンドの浅草橋に
美味しい店があふれているとまでは言わない。
それでもこの店ならばどこへ出しても
恥ずかしくないという佳店に困ることはない。

ザッと挙げただけでも
鮨の「梅寿司」、天ぷらの「大黒家」と「江戸平」、
うなぎの「よし田」に「千葉家」、
和食の「亀清楼」と「伝丸」、
とんかつの「スエヒロ」に「ゆたか」、
冷麺と焼肉の「KORYO」、
フレンチの「ビストロ・ラ・シブレット」と並ぶ。

使いようによっては、そばの「更里」、
洋食の「大吉」、中華の「馥香」と「水新菜館」、
カレーの「ゴア」、甘味の「にんきや」もある。
イートインは不可ながら
パン屋「ドーメル」のサンドイッチ、
鳥肉専門店「鳥豊」の弁当もとてもよい。
滅びたりとは言え、往年の花柳界。
それなりの店が残っていたり、
新たに生まれたりしている。

今から2年ほど前のこと。
浅草橋駅東口と西口の間、
総武線・高架下を横切るトンネル部分に
とてつもなく小さな中華そば店がオープンした。
席数はカウンターの5席のみ。
店の名を「幸貴」という。

しばらく、店先にたたずんで
様子をうかがっていても
客が出入りする気配とてない。
ガラス戸越しに透けて見える店内にも
人影がまったく見当たらない。
ただ、店から流れる匂いが何とも言えずによかった。

後日訪れて、ガラス戸を引くと、
店先でかいだのとは比べものにならないほど
濃厚にして懐かしい匂いに襲われた。
このとき、この店のラーメンが
相当に美味しいものと確信する。

還暦前と思しき、オヤジさんが作る中華そばは
ここ数年出会っていない旨みに満ちあふれていた。
スープは醤油ベースでキャメル色に半濁している。
化学調味料をまったく感じさせずに
鳥ガラと魚介系の出汁がバランスよくなじんでいる。
ラーメンやかけそばのつゆは飲み干さない主義だが、
そうしたい誘惑にかられるほどだった。

麺は太くも細くもなく、
ほぼ真っ直ぐの、ささやかちぢれ。
つるつるとしていながらも
しっかりとコシが残り、大好きなタイプだ。
ほどよい脂身のもも肉チャーシューに
細切りシナチクときざみねぎだけが
さりげなくどんぶりを飾る。

冷たい汗をかいているヤカンの水を
コップに注いで飲み干した。
ここのところ「幸貴」の中華そばに
すっかりハマッている。

 
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2008年1月14日(月)

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