「一歩一歩、おいしさを探して」
J.C.オカザワの脚で綴ったダイアリー

第403回
愛媛の山で撃たれた 哀れな仔いのしし (その2)

本郷の大きな楠の木の真ん前のフレンチレストラン、
「ペジーブル」1での忘年ディナー。
予約の際に仔いのししをお願いしてある。
鹿肉よりも猪肉が好きなことは昨日書いた。
ついでに言わせてもらえれば、
J.C.は猪鹿蝶(いのしかちょう)よりも
赤短・青短のほうがずっと好きなのである。

「何のこっちゃい?」と思われる向きもあろう。
一昔前の日本のお正月には
それなりの役割をはたしてくれた花札のことです。
猪鹿蝶の役はなく、赤短・青短を作れば、
短冊が1枚増える毎に、1文ずつ加算される
コイコイのほうが馬鹿ッパナより
はるかに奥が深いし面白い。

ここ10年、札には手を触れていないが
コイコイにかけてJ.C.はちょいとウルサい。
読者の方々でわれはと思われん方はご一報ください。
ぜひ1度、お手合わせいたしましょう。
ちなみにトンデモない優良会社に成長した任天堂も
昔は一介の花札メーカーにすぎなかったのです。

猪のせいでハナシが脱線した。
俗にいうウリ坊はフランスでは
マルカッサンと呼ばれ、食通には垂涎の食材。
愛媛の山奥でマタギに撃たれたというから
ノーベル賞作家・大江健三郎のふるさとあたりか。
子どもを撃つのは無慈悲きわまりないと思っても
当方はそれを食べるのだから大きなことは言えない。

当夜のワインは2本とも赤。
レ・ミッシェル・ブランシュの
コート・ド・ボーヌ’04年と
ニコラ・ポテルの
ヴォルネイ・プルミエ・クリュ’03だ。

前菜はあわびのベニエ(フライ)と
リードヴォーのソテーのハーブサラダ添え。
これが意外な取合わせでありながら
お互いに違和感を消し合って、それぞれに美味しい。

さてお待ちかねの仔いのしし。
フォワグラを合わせてパイ包み焼きで登場した。
バラ肉やモツ類も楽しみたいところだが
ぜいたくを言っている場合ではない。
子どもといえども、野生の食物を食べているので
牛肉や豚肉にはない風味が立ち上る。
当然のことに、いのしし効果でワインが引き締まった。
付合わせのキノコと絹さやも一役買ってくれている。

少々残ったワインのためにフロマージュを数種類。
マンステール、エポワス、ブリーダモー、
ロックフォールを少しずつつまむ。
ウォッシュのエポワスにワインを手なずけさせたら
右に出るチーズはないことを再確認。
デセールはカスタードのスフレとそばの実のグラッス。
締めくくりにプティフールとエスプレッソを味わう。

暗闇の中にそびえる大楠に見送られながら
「ペジーブル」をあとにした。
年の瀬の週末のこと、苦労しながらも
本郷三丁目の交差点近くにバーを見つける。
レモンがない代わりにライムがあるというので
久しぶりにジンリッキーを飲んで、お開きと相成った。


本日の店舗紹介
1 「ペジーブル」 http://www.paisible.jp/

 
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2008年1月17日(木)

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