「一歩一歩、おいしさを探して」
J.C.オカザワの脚で綴ったダイアリー

第405回
鮮魚がいっぱいのイタリアン (その1)

諸物価高騰のおり、飲食店もご多分にもれず、
値上げに走るところが目立ってきた。
原材料費が上がるのだから
仕方がないと言えば、仕方がないのだが
危惧されるのは消費者の財布のヒモが固くなって
外食の際に廉価なチェーン店に殺到してしまうことだ。

人間の食事は動物のエサとは違う。
最近は「食育」という言葉があらためて見直され、
食文化の継承に目を向ける人々も増えてきた。
それでもやはり背に腹は代えられぬ。
物価が上がっているのに、給料が上がらないのでは
食費を切り詰めるのも、むべなるかな。
何やら世界的なスタグフレーションの始まりが
今、目の前に到来しているのかもしれない。

食材について常々思っているのだけれど、
良心的な価格で良質の料理を提供する
フレンチビストロでも魚介類だけは期待できない。
パテでもテリーヌでも肉系が中心となり、
牛肉ならばハラミのステーキやほほ肉の煮込み、
鶏はローストやグリル、豚もまた似たり寄ったりだ。
魚介類は肉よりも高価で日持ちも悪いから
レストランにはダブルパンチとなってしまう。

フレンチですらそんな調子だから
イタリアン、それも手軽な店は推して知るべし。
客の前にズラリと鮮魚を並べた高級店も
このところ品揃えをずいぶんコントロールし始めた。
ましてやカジュアルな店では
新鮮なシーフードを自由に扱えるものではない。
これがメニューの幅を狭める原因ともなっている。

マンダリンオリエンタル東京が入居する三井タワーに
ほど近いところに半年前に開店した
ヴェネツィア料理専門店「ダンドロ ダンドロ」※1がある。

東京には相当数のイタリアンがひしめく中で
郷土料理を名乗る店はきわめて少ない。
もともとフランス料理以上に
郷土色豊かなイタリア料理のこと、
その特色を前面に出す店がもっと増えてもいいハズだ。

ピエモンテ・ロンバルディア・ヴェネト・
トスカーナ・ラッツィオ・カンパーニャ・
シチリア・サルディーニャ各州の
地方料理専門店が続々と誕生したら
どんなに楽しいことだろう。

イタリア人の目に、現在の東京のイタリアンは
さぞや特徴のない退屈なものに映るのではなかろうか。
ちょうど日本人がニューヨークの街で出会う
すし・天ぷら・うなぎ・そばと、何でも出すが
いずれも中途半端な和食店のようなものだろう。

さて日本橋の「ダンドロ ダンドロ」。
海の都のレストランとあっては魚介料理を
充実させないわけにはいかない。
名物のいか墨や蟹のリゾットも
期待できるのではないか。
メニューを開き、一通り目を通しながら
本日のスペツィアーレを接客係に問う。

           =つづく=


本日の店舗紹介
1 「ダンドロ ダンドロ」 http://www.dandolo.jp/

 
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2008年1月21日(月)

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