「一歩一歩、おいしさを探して」
J.C.オカザワの脚で綴ったダイアリー

第408回
この鮨が魅了する!(その2)

今からちょうど6年前。
六本木「兼定」の小肌のにぎりに圧倒されていた。
小肌のあとも、蒸しあわび、赤貝とそのひも、
まぐろの赤身と中とろに、ずっと舌鼓を打ちっぱなし。
これが鼓でなくて太鼓だったら、無法松の乱れ打ちだ。
不思議なのは穴子と玉子に魅力が薄いこと。
このあたりが世の評論家の一部に「兼定」は
海鮮鮨屋などと揶揄される一因かもしれない。

銀座の「水谷」を絶賛する鮨オンチの
覆面評論家・友里征耶もその1人だが
彼の酷評する「ミシュランガイド東京」が
「水谷」には三つ星を進呈しているから
何をか言わんや、である。
はたから見ると、その呉越同舟が滑稽の極み。
もっとも鮨オンチたちの繰り広げる
たわいない茶番に罪はない。

最初に訪れた2002年2月の夜以来、
ときどき「兼定」におジャマするようになった。
直近は昨年の秋のこと。
その日の昼食にはフーテンの寅さんで有名な
柴又の「川甚」で鯉とうなぎを食べた。
川の幸のあとは海の幸を満喫しようという算段だ。
例によっていただいたものを明記して、赤字が特筆。

つまみ:新いくら・枝豆・めひかり一夜干し・
     本ししゃもオス・ひらめはぜあじ
     たこ桜煮・かつお・かつお血合い・
     〆さば・墨いかのワタ・あん肝
にぎり: ひらめえんがわ・墨いかw/かぼす・
     皮はぎw/肝のルイベまぐろ赤身づけ
     大とろ・春子w/おぼろ・小肌
     あじ押し寿司2カン・平貝・さば寿司
     穴子w/青柚子・赤海胆・穴子w/ツメ・
     ひらめの皮のあぶり・かんぴょう巻き・
     玉子
吸い物:あさりすまし椀

新いくらはこの時期、どこでも出すので食傷気味。
めひかりも珍しくはなくなった。
6年前に青森産だったひらめは横須賀だったが
弾力あるテクスチャーと繊細な旨みを愛でる。
松島のはぜがすばらしく、銚子のあじは当夜のベスト。
モノがよくなければ出せないかつおの血合いは
にんにくとあさつき入りの醤油で味わい、これもよし。

にぎりでは凍らせた肝を添えた皮はぎ。
常に安定した滋味を誇る小肌。
大間に揚がった本まぐろの赤身づけと大とろ。
そして上方風のあじの押し寿司と
昆布を巻いたさば寿司。
まったくもって文句のつけようがない。

食が細いので初回はお好みを控えめにいただいた。
このたびは男女を問わず、J.C.以外は大食漢が勢揃い。
親方の思うがままのおまかせで入荷したサカナの
すべてを味わいつくしたのではなかろうか。
J.C.もツラレて懸命にがんばってはみた。
その結果が勘定に如実に表れてしまい、
初回に1人1万5千円ほどだったのが
今回は2万3千円に跳ね上がっておりました。
鮨屋へはガツガツせずに
ほどよく召し上がられる深窓の令嬢と
二人きりで出掛けるに越したことはない。
あらためて肝に銘じた次第なりけり。

 
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2008年1月24日(木)

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