「一歩一歩、おいしさを探して」
J.C.オカザワの脚で綴ったダイアリー

第413回
西荻は中央線一のグルメタウン(その1)

新宿以西の中央線沿線で
もっとも訪れる機会が多いのは西荻窪。
大久保にはまだ、新宿のざわつきが残っているし、
東中野はのんびりしすぎて何もない。
中野にはよい店が何軒か揃っていても、
街全体の雰囲気にとりとめがなく、把握しにくい。

高円寺は若者向けで、われわれの世代にはキツい。
緑深き阿佐ヶ谷は好きだ。
商店街もいい感じだし、映画だって観れる。
荻窪は何やらゴチャゴチャした印象。
カレーやラーメンやもつ焼きを食べるには
都合がいいのかもしれないが、
大人の街としての熟成感に欠ける。

西荻を通り越して吉祥寺まで行くと、
ちょっとオヤジの手には負えない気がする。
すでにメガタウンの表情を持つ街並みに
即物的な冷たさを感じてしまう。
どうにもなじめず、アウト・オブ・コントロール。
加えてここはすでに武蔵野市。
J.C.が執筆するグルメガイドの類いが
東京23区内を取り上げることが多いのも
吉祥寺に現れない要因の1つになっている。

とにかく西荻は街のたたずまいが、まずよろしい。
駅前のロータリーにしても
コンパクトにまとまっているのが好ましい。
そして北口にも南口にも優良店が居並んでいる。
ザッと挙げてみましょう。

北口
 かのこ(うなぎ)・坂本屋(食堂)・いしはら(ラーメン)・
 夢飯 (シンガポール)・おたまじゃくし(無国籍)

南口
 鮨たなか(すし)・鞍馬(そば)・おみの(和食)・
 兆治(和食)・こけし屋(洋食)・はつね(ラーメン)・
 甘いッ子(甘味)

粒揃いとはこのことである。
フレンチやイタリアンは弱いが、
これは中央線沿線の宿命だから、致し方ない。

西荻南口から南下して五日市街道にぶつかると、
すぐ右手にうなぎの名店「田川」がある。
典型的な家族経営の店で、先代亡きあとは
女将さんと2人の息子が切り盛りしている。
しばらく伺っていないし、次著の取材も兼ねて
新年が明けて間もない金曜の夜に独りで出掛ける。

見覚えのある小上がりに通されて
50分待ちを告げられた。
ほかに客はいないが、兄弟の弟さんのほうが
2度ほど出前の配達に出て行った。
来店客よりも出前のほうがずっと多い。
畳の上から眺めていると、兄がうなぎ、
母がごはんと新香を担当しているようだ。

大根のぬか漬けと山ごぼうのたまり漬けで
キリンラガーの中瓶を飲みながら、
畳の隅に置いてあったのスポーツ新聞を開く。
うなぎ屋の場合はハナから待つつもりでいるから、
ちっともイライラしないもの。
これが鮨屋だったら、とてもこうはいくまい。

           =つづく=

 
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2008年1月31日(木)

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