第418回
びっくり仰天の焼き鳥屋
月に1度は都内のどこかに集まって
美味しい酒と料理を楽しむ仲間にN戸夫妻がいる。
もう1人、大手新聞社の秘書嬢・J子さんが加わり、
いつも4人でワイワイガヤガヤやっている。
昨年末の忘年会は浅草の奥座敷、
橋場の「山海」で、ふぐを堪能。
今年の遅すぎた新年会は
東横線・都立大学の「鳥はる」に集合した。
昨年の1月にも来ているから丸1年ぶりになる。
駅の改札を右に出たら歩いて2分ほど。
大きく「やきとり 鳥はる」と書かれた
真っ赤なテントが見えてくる。
ところがこの店、焼き鳥は世をしのぶ仮の姿にすぎない。
実際は下手な割烹も真っ青の
真っ当な日本料理を供する優良店なのである。
焼き鳥も焼いてくれるから看板に偽りはないが、
何せ、食材の取り揃えからしてスゴいのだ。
当夜の献立を記すと
前菜盛合わせ(あん肝・竹の子木の芽和え・ふき煮
ふぐ皮煮凍り・たらの芽胡麻和え)
聖護院かぶら蒸し ふぐ白子ポン酢
*鳥ハツ串焼き *平政刺身w/しぼり大根
甘鯛酒蒸しw/田ぜり 和牛ロースステーキ
*活なめたがれい煮付け 活天然とらふぐ刺し
ざるうどん
いやはや、食いも食ったり、であった。
旨いものばかりだが、*ジルシは特筆モノである。
店内に備え付けられた水槽に活魚が収められていて
活きたなめたがれいには、この日初めてお目に掛かった。
北海道や東北で珍重される冬の風物詩は
煮付けに最適のかれいで、
西のめいたがれいに対して、東のなめたが迎え撃ち、
まさに双璧と呼ぶにふさわしい。
天然のとらふぐ刺しもよかったが
その上をいったのは平政の刺身。
元来、伊豆諸島あたりでは夏に旬を迎える平政は
この時期ならば、北陸で水揚げされる。
余分な脂を抜いたぶりのような身肉が清冽そのものだ。
ジューシーな辛味大根といった感じの
しぼり大根との相性がとてもよい。
そして1人に2本ずつ配られた鳥ハツ串焼きも
さすがに元々は焼き鳥で鳴らした店ならではのもの。
新鮮な鳥の心臓がプリップリで
これはタレなんぞ付けずに塩だけでいただく。
焼き鳥は正肉や手羽先も旨いが、
ハツやレバーの内臓モノが何よりだ。
心なしか明日への活力が生まれてくるような気がする。
生ビールと芋焼酎で出来上がった4人のヨッパライは
夜が更けても帰巣を主張するものとてなく、
タクシーを飛ばして東京を縦断し、都立大から浅草へ。
観音裏のスナック「N」に到着すると、
さっそくN戸氏の小林旭が始まった。
曲は横綱・朝青龍の天敵とも言える
内舘牧子さんが詞を書いた「腕に虹だけ」であった。
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