「一歩一歩、おいしさを探して」
J.C.オカザワの脚で綴ったダイアリー

第428回
伝説の洋食屋は今

今は昔、「キッチン・ラッキー」なる
伝説の洋食屋がどことなくつかみどころのない
風変わりな町、田端新町にあった。
JR高崎線の踏み切りのたもとで
今そこには居酒屋「八天将 田端新町店」がある。

その洋食店が閉店してかなりの月日が経つ。
10年近く前に探して訪れてはみたものの、
すでに店をたたんだあとだった。
その後、流れを汲んだ同名店が近くにできたと聞くも
そこもしばらくして閉じたようだ。
そして現在は西尾久と西新井に2軒の
「キッチン・ラッキー」が暖簾を掲げている。
ともに弟子たちなのか、縁戚筋なのかは判然としない。

2月初旬の寒い土曜日。
その日の昼食は日暮里の手打ちうどんの店「あかう」で
生醤油すだちおろしうどんを食べた。
香川県の名物中の名物だ。
半割りのすだちがもう半分ほしいが、なかなか美味しい。

さて、陽射しは出ていないし、風もある。
かなり冷え込むものの、早歩きならそれも気になるまい。
平日にはなかなか長距離散歩を楽しむことができない身、
「今日は歩くぞ!」と心に決めた。
西日暮里から田端新町に抜け、「キッチン・ラッキー」の
跡地を訪ねたら、そこから阿部定事件で名高い、
いや、名高くもないか、とにかく尾久の町へ。
ここにある「ラッキー」の住所を控えておらず、
存在を確かめることができなかったのは残念。

荒川遊園地に到る。
大人がヤギやヒツジと戯れると、
よい子のみんなに白い目で見られる。それはマズい。
そこでJ.C.何を血迷ったか、観覧車の中の人となった。
何年ぶりだろうか、ほとんど記憶がない。
1971年の春、映画「第三の男」で有名になった
あのウィーンの大観覧車以来かもしれない。
ヘーッ、われながらぶったまげた。

都内でもっとも素朴な遊園地をあとにして
小台橋を渡り、扇大橋を渡って、足立区に突入。
なおも北上を続け、はるばる来たぜ、西新井大師。
ここに来るのもずいぶん久しぶり。
見慣れた帝釈天と違って、目に映るものが新鮮だ。

大師から再び歩くこと15分。
到着したのが足立区興野の「キッチン・ラッキー」。
田端新町以来の伝統的な名物は
コーンポタージュとマカロニグラタンだという。
その2品をさっそくビールとともにお願い。
ポタージュ、それも好まぬコーンだけは
まず頼むことはないのだが、
名物といわれちゃ引き下がれない。
ちなみに数種類あるグラタンは蟹入りで注文した。
あとはA・Bと2種あるとんかつのうち
安いほうのとんかつA(700円)を。

ねっとりとしたポタージュは障子張替え用の糊みたい。
これはどうにも口に合わない。
インパクトのあるグラタンはさすがであった。
とんかつAは可も不可もなく。
夫婦2人がのんびりやって、地元に根付いた洋食店は
都心から遠路はるばる出掛けるには及ばないが
近所にあったら、きわめて便利な1軒といえよう。

 
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2008年2月21日(木)

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