「一歩一歩、おいしさを探して」
J.C.オカザワの脚で綴ったダイアリー

第433
市川崑の冥福を祈る (その2)

映画監督・市川崑が2月13日に亡くなった。
ただ今神保町シアターで彼の映画特集が催されていて
故人の冥福を祈る気持ちもあり、足繁く通っている。
おかげで、劇場近くの店を訪ねる機会が増え、
昨日の「ランチョン」に続き、今日も界隈の店々のご紹介。

すずらん通りが白山通りにぶつかる手前の
左手にある古い餃子専門店が「スヰートポーヅ」
昔はウヰスキーなどと表示するメーカーもあって
「ヰ」の字の1文字だけで
何十年もタイムスリップしたような気分になる。
客席28席の小体な老舗は昭和11年創業。
二・二六事件が勃発した年のことである。

神保町の交差点を囲むように
中華系の飲食店が多いのは明治の昔から
このエリアに寄宿する中国人留学生が多かったため。
「スヰートポーヅ」の向かいでも
元祖冷やし中華(これが不デキ)を名乗る
「揚子江菜館」が立派なファサードを見せている。

午後1時までは筒状餃子一品だけを扱って
ほとんどの客が餃子定食を食べている。
クタクタのわかめ入り味噌汁を敬遠する向きは
味噌汁の付かない餃子ライスを注文する。
通常の定食は餃子8カン付けで、これを小皿と称する。
中皿が12カン、大皿が16カンと増えてゆく。

この店の餃子はケレン味を排して、素朴に美味しい。
単独の客が多く、4人掛けのテーブルは相席となるが
2人までしか掛けさせないので、狭苦しさは解消された。
以前はキツキツで往生した記憶がある。
女性の接客振りがかいがいしく、
近著「J.C.オカザワの古き良き東京を食べる」では
「200選にもれた有名店」としてランクしたものの、
「名店200選」入りでもよかったと思わぬこともない。
次回は13時過ぎに入店して
天津包子と水餃子でビールを飲んでみたい。

界隈には数軒の「いもや」という店が暖簾を掲げている。
もともとは天丼がウリだが、今では天丼から派生して
天ぷらやとんかつを主力に据えた店舗のほうが多いくらい。
確か「いもや」の1号店は半チャンラーメン発祥の店、
「さぶちゃん」のすぐそばの店と記憶する。

映画と映画の間の中途半端な時間に遅い昼食となり、
かれこれ四半世紀ぶりでその1号店の暖簾をくぐった。
品書きを見やると、天丼が550円。
ほかには800円の海老天丼と100円の白菜新香のみ。
天丼をお願いして、待つこと約10分。
どんぶりには揚げ立ての海老・きす・いか・海苔が1つずつ。
値段が値段なのでボリューム感には欠けるが
どこへ出しても恥ずかしくない立派なものだと思う。

いかが旨みの薄いもんごいかなのは仕方がない、
と言うより御の字と言うべきか。
これにしじみの味噌汁が付き、
卓上のきざみたくあんと千切りの紅生姜は
お好きなだけどうぞ、という塩梅。
100円の白菜新香も頼まなきゃ損の真っ当なものだ。
大学の乱立する学生街にあって
「いもや」の天丼が学生の強い見方であることに
異論をはさむ余地はない。
それどころか、日本の将来を担う天丼ですよ、これは!


【本日の店舗紹介】
「スヰートポーヅ」
http://r.gnavi.co.jp/a675600/

 
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2008年2月28日(木)

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