「一歩一歩、おいしさを探して」
J.C.オカザワの脚で綴ったダイアリー

第436回
東京ステーションホテルの思い出

1週間ほど前の日経新聞のテレビ欄。
阪大教授・小矢野哲夫さんのコラムの
「にほんごチェック」に目がとまった。
比較的新しい言い回しの「よろしくどうぞ」が
旧来の「どうぞよろしく」と併用され始めたのは
1970年前後というおハナシだった。

これには思わずひざを打つ。
振り返って記憶をたどると
「よろしくどうぞ」を初めて意識したのが
まさしく1970年のことだったからである。
ちょうどその頃、東京駅丸の内南口にあった
東京ステーションホテルでバイトをしていた。

ちょうど駅舎の南のはずれ、中央郵便局の向かいに
ホテルのコーヒーショップがあったのだった。
コーヒーショップとは言うものの、
真っ当な洋食や鮨や中華そばまで
何でもこなすデパートのお好み食堂のような店で
当時の店長が業者との電話の切り際に
「よろしくどうぞ」を使ったのである。
違和感がなかったのは
すでに聞き覚えのある言葉だったからだろうが
キチンとした立場にある人が
業務上にも使えるフレーズのだな、と強く印象に残った。

そんなことから久しぶりに学生時代を思い出す。
1973年のあべ静江のヒット曲に
「コーヒーショップで」があるが
あちらのほうは純粋な喫茶店、
こちらはデパートの食堂さながらなので
様々な料理を食べる機会に恵まれた。

中でもJ.C.のお気に入りはBランチ。
おそらく280円だったと思う。
ポークチョップと生姜焼きの
中間くらいの厚さの豚ロースのソテーと
やや小さめのハンバーグの盛合わせ。
千切りキャベツとケチャップで炒めたスパゲッティと
ライスもすべてステンレスのプレートに一緒盛り。
あの渾然一体となった匂いと味がいまだに忘れられない。

数日前に久しぶりに丸ビルを訪れた。
5年ほど前、「丸ビルを食べる」を出版するために
毎日2度ずつ通ったビルに、ずいぶんとご無沙汰していた。
最後に食事をしたのはいつのことで、どの店であったろう。
記録を調べれば、すぐにでも判明するが
面倒くさくて、その気にすらなれない。

その後、六本木ヒルズやコレド日本橋、
東京ミッドタウンや新丸ビルと数々の
複合商業施設が続々と生まれたが
丸ビルに通いつめた反動からか
身も心もそういった「デカ箱」を
まったく受け付けなくなっている。
そういう場所で食事をしても
ちっとも楽しくないし、どこか気分も晴れない。
自分自身もその一員なのに人ごみがイヤだ。

久々の丸ビルの5階に上がり、
テラスから真正面に東京駅を臨むと
わが青春のステーションホテルはただいま大改装中。
2011年には再開の予定と聞くがオープンしたら
一番大きくてカジュアルなレストランに出掛け、
ポークソテーでビールを飲みたい。

 
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2008年3月4日(火)

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