「一歩一歩、おいしさを探して」
J.C.オカザワの脚で綴ったダイアリー

第439回
散歩の達人と食べる穴子の天丼(天丼三連荘・その2)

神保町シアターの市川崑特集も大詰めで本日限り。
「おとうと」・「悪魔の手毬唄」・「細雪」の3本で終わる。
5日水曜日の午後に仲代達矢・波乃久里子主演の
「吾輩は猫である」(1975年)を観た。
映画自体のデキはイマイチだが、
懐かしい脇役陣に心が和む。
三波伸介・伊丹十三・緑魔子・上原ゆかり・
前田武彦・海野かつをの面々。
忘却の彼方から記憶がよみがえる。
殊に上原ゆかりなど、1962年頃の
マーブルチョコレートのCM以来だ。

終映後の夕刻にすぐそばの三省堂をのぞくと
妙齢のご婦人が「庶ミンシュラン」を手にとり、
ページを繰っているではないか。
そしてそのままレジに向かい、
購入してくれたのだった。
後光のさす彼女の姿に感謝の意を捧げる。
こういうシーンにはなかなか出くわせないものだ。

たまたま発売が同じ日になった週刊現代が
特集記事を組んでくれたせいか
「庶ミンシュラン」の売れ行きはきわめて好調。
1週前に出た「文豪の味を食べる」も
おかげさまで健闘してくれている。
八重洲のブックセンターでは
先週の売り上げランキングの
ノンフィクション部門で13位にランクされていた。

続いて東京堂書店にまわる。
ここでは坂崎重盛さんの「東京読書」が
ベストセラーの第3位に君臨していた。
実はこの書、3週間ほど前に
坂崎大兄から直々に頂戴したのだった。
この人の本を読んでいると、心の憂さも世間の風も
まったく気にならなくなるから不思議だ。
浮世のことを書いていながら
浮世離れしているのは人生の年輪ということか。

その夜は縁あって知り合った大兄と
このコラムにもたびたび登場する盟友の
K石クンとの3人で酒を酌み交わしたのだった。
場所は人形町の「天ぷら 中山」。
「庶ミンシュラン」では二つ星に輝いている。
いや、二つ星に輝かせたのだ、エヘン!
と自慢しても始まらない。
粋なステッキ片手に現れた重盛サンは
相変わらずのオシャレぶり。
これも一朝一夕の付け焼刃的ダンディズムではない。

ビールのあとは賀茂鶴の燗、
そしてそのあとは芋焼酎・甜のロック。
個別にもらった中皿の刺盛りの内容は
まぐろ・あぶり金目・いか・たこ・赤貝とそのひも。
おろし立てのわさびもタップリ。

天ぷらに突入して、まずは
にんじん・玉ねぎ・蓮根と野菜の三連荘。
この店の精進揚げは魚介類の上をいく。
きす・海老・めごちとやって
再び精進モノのピーマンとしいたけ。
そして締めくくりは独特の濃い目の丼つゆに
ドボンと浸けた穴子の天丼。
これには珍しくもわさびが添えられる。
いかにも下町風の穴子天丼に重盛さんもご満悦。
まだまだ飲み足りないので
明治座ウラの和風バー「N」に急ぐ三匹の粋人、
もとい、酔人たちであった。

 
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2008年3月7日(金)

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