「一歩一歩、おいしさを探して」
J.C.オカザワの脚で綴ったダイアリー

第443
日曜の朝から みんなヨッパライ (その2)

北区十条の商店街にある「天将」に来ている。
城北のジェオグラフィに明るくない人たちにとって
王子・十条・赤羽は、強烈なディープ感が漂うエリアだ。
これが北区の西隣りの板橋区となると
区のはずれ、埼玉県との境に近い赤塚や
成増くんだりまで遠征しても
「思えば遠くに来たもんだ」という実感だけで
街にコク味やしつっこさがないから
ディープな印象はまったくない。

ディープな街のディープな大衆食堂「天将」。
昼前だというのに若い娘さんが2人で
レモンサワーをやっている。
ほろ酔いの様子でケラケラと笑っている。
ほかの客もてんでに生ビール・瓶ビール・
日本酒のヒヤ・燗酒・酎ハイをやっている。

入店直後はこの光景に目を疑った。
たまさか小粋な、いや場合によっては小生意気な、
と感じる酒亭で「酒を飲まない客はお断り!」なんて
ところもあるにはあるが、
「天将」はそういった高飛車な店ではけっしてない。
グループ客は和気あいあい、ワケありの二人連れにも
暗さが微塵もなく、ほのかな明るさが宿っている。
独り酒を酌むオジさんの背中にさえ、淋しさはなく、
気持ちよく酔っているのが手に取るように判る。
この空気こそが、この店の魅力といってよい。

この環境に身を置いたのだ、
これではJ.C.とて飲まぬワケにはいかぬ。
頼んだビールはスーパードライの大瓶が来た。
1本550円とはさすがに大衆価格ではないか。
ほぼ同時にポテトサラダ(300円)も到着。
じゃが芋はそれほど好むほうではないのに
ポテサラがあると何となしに注文してしまう。
取りあえずビールの気分で、取りあえずポテサラなのだ。

お次の一皿は炒り豚(300円)。
あちこちの大衆食堂でよく見掛ける料理で
逆に大衆食堂以外では目にすることがない。
いわゆる豚の小間切れや三枚肉のスライスを
玉ねぎやキャベツと炒めたものだが
味付けは店によって千差満別。
「天将」では玉ねぎたっぷりのケチャップ味、
ナポリタンのスパゲッティ抜きといった感じだ。
当然のごとくにビールにはマッチする。

洋食っぽい皿が続いたあとは
目先・箸先を換えて、まぐろの味噌漬け(350円)。
こいつもずいぶんと安いな。
少々パサつくものの、それなりの水準はクリアしている。
炒り豚には千切りキャベツや
赤いスパゲッティが添えられたのに対して
まぐろ味噌漬けは添え物なしの和皿にそのまま。
このあたり、店主は和と洋の識別をキチンとしているようだ。

ビールの瓶がカラになっても、まぐろが半分残って
今度はアサヒの生小(350円)を1杯。
瓶もうまいが、生も劣らずにうまい。
昼間の酒は効くといっても
これっぱかりのもので酔いが回るJ.C.ではない。
足取りも軽く、王子―小台―熊野前―町屋―三ノ輪と
都内に唯一残ったチンチン電車の荒川線沿いを
テクテクと歩いて帰ってきた。
まぁ、けっこうな距離ではありましたな。

 
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2008年3月13日(木)

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