「一歩一歩、おいしさを探して」
J.C.オカザワの脚で綴ったダイアリー

第445回
昼しか開けない とんかつ屋

読者の太田裕士さんのご要望にお応えしまして
本日より、紹介店の住所・電話番号を末尾に明記しました。
ご利用ください。

上野はとんかつ発祥の地。
その中でも上野の御三家の異名を取るのは
「ぽん多本家」・「蓬莱屋」・「双葉」である。
それぞれにレベルの高いとんかつを
長いこと揚げ続けている。

「ぽん多本家」は多種多彩な品書きが信条。
カツレツをはじめ、ポークソテーとタンシチュー、
はたまた、平目やはまぐりのフライなんぞも供する。
ただし、あれやこれやと調子にのって注文すると、
会計時に顔面蒼白となるので、ご注意召されたし。

「蓬莱屋」はヒレカツ専門店。
ほかにあるのは串カツだけだが
これとて使われるのは豚ヒレ肉だ。
小津安二郎がこよなく愛した店としても知られている。

さてシンガリに控えしは「双葉」。
この店は「蓬莱屋」とは対照的にロースカツ一本勝負。
ロースといっても脂身を除去してしまうので
しつっこさを感じさせることのない
ヒレカツ派にも受け入れられるロースカツだ。

数ヶ月前に麻布十番の洋食店「EDOYA」で
ポークソテーを食べていたときのこと。
厚めにカットされた豚ロースには脂身が見当たらない。
これはこれで美味しいのだが
少しでも脂が付いていたら、ありがたいのになぁと
ぼんやり考えていてハタと思い当たった。
このソテーは「双葉」のロースカツにそっくりじゃないか!

その日から日にちの空かない、ある土曜日の昼下がり。
上野広小路に近いとんかつ店「双葉」の2階に
独りたたずむJ.C.オカザワの姿を見ることができた。
目の前に運ばれたのは2940円也のとんかつ定食。
5切れのとんかつは横にも1本包丁を入れられて
10片の小さな肉塊となって整列している。
何も付けずにまずは1片を口元に運ぶ。
ヒレ肉のように柔らかいロースを噛み締めていると
やがておだやかな旨みが舌の上に拡がった。

10ピースもあるのだから
塩・レモン・とんかつソースなどを駆使して
ヴァリエーションを楽しまぬ手はない。
マッチするとも思えなかったが
ハインツのトマトケチャップまで試してしまった。
上野のとんかつ屋の特徴として
ケチャップを置くところが散見される。
以前は気になったキャベツの水切りに
今回は手抜かりなく、ごはんがとても美味しい。
絹ごし豆腐の味噌椀、きゅうりと大根のぬか漬け、
それぞれにけっこうであった。

いつの頃からか営業時間が11時半〜14時の昼のみとなり、
休業日は日・月・木曜日の週休3日制。
殿様商売と言ったら叱られるかもしれないが
余裕しゃくしゃくであることは確かだ。
品書きから海老入りコロッケも蟹サラダも消えて
仕込みだってずいぶんラクになったことだろう。

壁に「おみやげ用豚バラブロック」の貼り紙を見とめる。
100g=105円で500gからとあり、衝動的に購入すると、
なぜか「御茶ノ水小川軒」の紙袋に入れてくれたのだった。
さて、後先を考えずに半キロも買ってしまった豚バラ、
一体どうして食べてやろうかしらん。
自分で蒔いた種とはいえ、悩みのつきないJ.C.であった。

【本日の店舗紹介】
「双葉」
東京都台東区上野2-8-11
03-3831-6483

 
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2008年3月17日(月)

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