「一歩一歩、おいしさを探して」
J.C.オカザワの脚で綴ったダイアリー

第449回
東京一の立ち喰い寿司

回転寿司ほどではないにせよ、
立ち喰い寿司にもめったなことでは行かない。
双方を見下しているワケではないが、
それぞれに理由がないこともない。

回転寿司では真っ当な寿司店に遭遇するのは
至難の業であることが1つ。
加えてニューヨークのように
東京より危険な街に長く住んだことによって
用心深くなってしまったことも上げられる。
自分の口に入るものが不特定多数の人々の前を
無防備に通過してくることがイヤだ。

東京ならさほど心配することはないけれど、
様々な犯罪者が行き交う街では
ストレンジャーの前を通ってきた食べものに
おいそれとは手を伸ばす気になれない。
異常者に薬物でも振り掛けられたりしたら
一巻の終わりということになりかねないからだ。
そんな用心深さのおかげか、あるいは小心のせいか、
J.C.は駅のプラットフォームでも
常に太い柱や壁を背に立つクセがついている。
間違ってもフォームの端に立って
電車を待つようなまねはしない。

立ち喰い寿司に縁がない理由はもっと単純。
単に立ってものを食べるのが嫌いなだけだ。
立ち飲みはいいが、立ち食いは落ち着かない。
ものを食べた気がしないのだ。
ところが、ここ1〜2ヶ月の間に
立ち食い寿司を3度も訪れた。
3軒とも初めての訪問であった。
浅草橋ガード下の「柳橋美家古寿司本店立喰部」では
やはり来るべきではなかったと後悔し、
立石の駅前の「栄寿司」ではそこそこに満足し、
蒲田の商店街の「くま寿司」には
東京一の立喰い寿司のお墨付きを与えることとなる。

何かの雑誌で知りえた「くま寿司」。
供される品々は銀座・浅草のレベルに達している。
場所は老舗のうなぎ屋「寿々喜」の真ん前。
立食でも8人ほどのスペースしかなく、
これでは立ち喰いにするしか手立てがない。
しかもガラス張りのために通りから丸見えで
とても落ち着いて食べてはいられない。
もっとも立ち喰いでゆっくりされたら店も迷惑だろう。

ビールやカップ酒は自分で冷蔵ケースから出す。
店主は30代半ばだろうか、たった1人で切り盛りする。
つまみを4点ほどお願いすると
〆さより・たこ桜煮・あぶり平貝・〆春子の順に出た。
いずれも難点がなく、殊に春子が秀逸。
皮目を柔らかく仕上げている。
にぎりに切り替えて、いただいたものは下記の通り。
 真鯛・平目赤貝小肌・煮はまぐり・
 まぐろ赤身・穴子・〆さより・玉子
青字が特筆モノだ。

つまみ4品ににぎりが9カン。
飲み物はビール中瓶・カップ酒・燗酒が1本ずつ。
これでお勘定は8千円ちょうど。
値段も立ち喰い寿司のそれではなく、
浅草あたりの一流店並みだった。
確かに東京一の立ち喰い寿司店なのだが
このレベルの寿司を立って食べさせてよいものか、
ささやかな疑問が脳裏をよぎったことだった。


【本日の店舗紹介】
「くま寿司」
 東京都大田区西蒲田7-62-9
 電話番号非公開

 
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2008年3月21日(金)

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