「一歩一歩、おいしさを探して」
J.C.オカザワの脚で綴ったダイアリー

第450回
そばに惹かれて 旧東海道めぐり(その1)

変貌いちじるしい品川駅周辺だが
そこから南に進路を取って10分も歩けば、
のどかな町並みの続く旧東海道が
「ようこそ!」とばかりに、やさしく迎えてくれる。
この界隈は古典落語「居残り佐平次」の
舞台となった場所だ。
この演目は三遊亭圓生、古今亭志ん生、
立川談志など、名人と呼ばれてしかるべき、
そうそうたる顔ぶれが持ちネタにしている。
志ん生のせがれの志ん朝も得意としていた。

夭折を惜しまれた映画監督・川島雄三が
この噺を始め、「品川心中」などいろいろ取り混ぜて
映画化したのが「幕末太陽傳」。
フランキー堺が佐平次を演じて活躍した。
高杉晋作役で石原裕次郎も顔を見せているが
裕次郎の時代劇の似合わないことといったら・・・。
挙句の果ては小林旭や二谷英明まで
出てくるのだから、もはや漫画の世界だ。

同じ日活映画「太陽の季節」の翌年に
封切られたこの映画がタイトルに
「太陽」を擁するのはあながち偶然ではない。
「幕末太陽傳」は幕末版「太陽の季節」と
言えなくもないのである。

最近、週末に「歩き溜め」をする習慣がついている。
久々に旧東海道を歩いてみたくなった。
美味しいそばを食べさせる店が何軒か思い浮かび、
ついでにそば屋のハシゴをという気になったのである。
浅草橋から京急直通で約20分、品川駅に降り立つ。

歩き始めて間もなく、八ツ山橋を渡ると
思い通りに旧東海道が迎えてくれたのだった。
すぐ近くには京急・北品川駅がある。
品川からはじゅうぶんに徒歩圏内だから、
わざわざ京急に乗り換える手間を惜しんで
歩いて来る人も多いのではないか。
したがって北品川の乗降客は少ない。

旧東海道に入って間もなく左折。
坂を下っていくと、ほどなく「しながわ 翁」が現れる。
試行錯誤の結果、店主が決断したのだろうが
極めてユニークな営業時間を取り入れた店で
午前9時から午後3時までの6時間。
朝は開けるが、夜は閉めるという方針なのだ。
しかも開店後1時間半の10時半までは
もりそばのみの提供となる。

入店すると、まだ11時15分だというのに
20席に満たない店内はほぼ満席。
これには少々面食らった。
週末の昼どきという気がしない。
もり(730円)はざると田舎から選ぶことができる。
田舎はあまり好まぬので、素直にざるをお願い。
これは海苔かけではなく、他店のもりと同じ。

薬味は大量のさらしねぎに、ごく少量の本わさびとおろし。
ねぎが多すぎ、ほかは少なすぎというのが偽らざる印象。
丁寧に打たれたそばは伸びやかなコシを備え、
甘さを控えたつゆともども「翁系」の最たるものだ。
730円の値付けも適正価格という感じがした。
この程度の軽めの量なら、今日は3軒回れそうだ。
再び旧東海道にとって返し、
意気揚々と南下を続けるJ.C.であった。

             =つづく=

【本日の店舗紹介】
「しながわ 翁」
 東京都品川区北品川1-8-14
 03-3471-0967

 
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2008年3月24日(月)

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