「一歩一歩、おいしさを探して」
J.C.オカザワの脚で綴ったダイアリー

第455回
私の愛する鉄火丼

昼に鮨店に入るときは
ちらしをお願いすることがほとんどで
にぎりはめったにいただかない。
昨今はばらちらしの復権いちじるしいこともあり、
なおさらその傾向に拍車が掛かっている。

ばらちらしにもいろいろあって
海鮮丼みたいのがあるかと思えば、
昔ながらのシゴトを施された鮨種が所狭しと
散りばめられたものもある。
散らされて初めて、ちらしが生まれるのである。
当然、J.C.は本来のちらしをこよなく愛するもので
あまりに生々しい海鮮丼は好まない。
ただし、どこから食べても味がそれほど変わらず、
いわゆる食味に変化のつけにくいばらちらしよりも
オーソドックスなちらしのほうが好きだ。

鮨屋の丼モノとなると、
ちらしに負けず劣らずの人気を誇るのが鉄火丼。
とは言うものの、このところ人気にかげりが見えて
以前ほど客が注文しなくなったような気がする。
生粋のまぐろ好きではないから
鉄火丼を頼むことはあまりないのだが、
ふと、京橋は明治屋そばの「京すし」を思い出した。

「京すし」の鉄火丼は1260円。
ちょいと薄めの食べやすいまぐろ赤身が十数切れも
どんぶりの酢めしをおおい尽くしている景色が美しい。
久しぶりに食べたくなったのと
庶ミンシュラン」では店の写真が外装だったので
次号のためにも、ぜひこのイケメン鉄火丼を
写真に収めておきたかったのである。

友人の金ピカ先生と八重洲ブックセンターで落ち合い、
意気揚々と出掛けていくと、店先に1枚の貼り札。
やや、そこには驚いたことに
「金曜スペシャル 鉄火丼1000円」と
書かれているではないか!
2人して「この週末は縁起がいいわい」と思ったことだった。

13時過ぎのことで店内は空いている。
一応、品書きに目を通すと
ちらしは1050円から小刻みに2千円台後半まで。
さば丼・あじ丼・いなだ丼は揃って980円だ。
ただし、丼モノはほとんど売り切れてしまい、
出来るのはちらしと鉄火丼のみだという。
こちらはハナから鉄火丼と決めているので迷わず注文。

ほんの数分で、しじみの味噌椀とともに
現れたどんぶりは見覚えのある艶姿。
白い器にまぐろの紅色が映え、
その上には切り海苔とおろし立ての本わさび。
思わず金ピカが声を上げた。
「この値段で本わさびは大将の心意気だねェ!」
まさにその通りである。
「これで儲けが出るのかなぁ、お店に悪い気がするよ」
心根のやさしい金ピカは、食べ終えるまで心配している。

ガツンと酢の利いた酢めしの上に敷かれた漬け生姜が
軽く煮切り醤油をまとったまぐろに絶妙のアクセント。
本当に金曜のスペシャルは申し訳ないくらい。
通常の1260円でさえじゅうぶんに破格なのだ。
2500円が適正価格ではなかろうか。
いや、銀座あたりじゃ3000円でも文句は言えまい。
J.C.は東京一の「京すし」の鉄火丼を愛してやまない。


【本日の店舗紹介】
「京すし」
 東京都京橋2-2-2
 03-3281-5575

 
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2008年3月31日(月)

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