「一歩一歩、おいしさを探して」
J.C.オカザワの脚で綴ったダイアリー

第456回
銀座はおでんの激戦区

東京の繁華街にはそれぞれに
その街をイメージさせる食べものがあるものだ。
例えば、上野ならとんかつ、日本橋はうなぎ、
人形町が洋食、神田はそば、神保町だと中華料理か。
浅草なんざ、鮨・天ぷら・すき焼き・どぜうと何でもござれ。
さすがに我が心のホームタウンは見上げたものだ。

まだまだあります、神楽坂が和食とフレンチ、
赤坂は焼肉で、大久保が韓国料理、
曳舟と十条はともに焼きとん、
荻窪・恵比寿・池袋となれば揃ってラーメンだ。
月島のもんじゃなんてのもあるし、
築地は一応、鮨ということにしておこう。

それでは東京を代表する街・銀座はどうだろう。
真っ先に思い浮かぶのが鮨で、
それに続くのは洋食だろうか。
天ぷらは比較的少なく、うなぎとなると激減する。
フレンチやイタリアンもけして多いとは言いがたい。

そんな中で意外なことに
店舗数が多くレベルも高いのがおでんである。
ただし、大衆店の「お多幸」はベツとして
「やす幸」を始めとした高級店が並んでいるから
それなりのフトコロ具合でないと
おいそれとは暖簾をくぐれぬうらみがある。

新橋寄りの8丁目の「四季のおでん」が
大阪の心斎橋から進出して、早や8年にもなろうか。
江戸風のそれとは一線を画するおでんがウリで
ここ数年、すっかり人気が定着した。
おでんの一大激戦区での健闘ぶりは賞賛に値する。

うなぎの寝床のような店内のカウンターに落ち着き、
いや、ここでは落ち着けないのだった。
背中と壁との間が狭く、ほかの客が後ろを通るたびに
わずらわしいことこの上ない。
両脇もかろうじてヒジとヒジとが
ぶつからない程度だから居心地はよくない。
オマケに同伴カップルが目立ち、
その双方がともに喫煙者である確率も高い。
この店では銀座ではなく、
曳舟あたりの大衆酒場にいるつもりで飲むのが得策で
さすれば、あまり気にもならなくなる。
セルフ・マインド・コントロールが肝要なのだ。

サッポロの赤星をお願いすると、
必ず登場するお通しが豆腐のおでん。
おぼろ昆布がふんわり乗せられ、黒七味も振られている。
これだけでも関東地方のおでんではないことが判明しよう。
続いて思い思いに好きなものを注文してゆくのだが
おでん以外には新香くらいしか用意されていない。
それだけに安易な頼み方は禁物で慎重に吟味したい。

冬場のたら白子とかきがよい。
必食の種は牛すじで、これは牛のアキレス腱だけを
じっくりと煮込んだものをポン酢で食べる。
最近は奥歯にからみつくようなネッチリ感が
気になるのだが、それでもじゅうぶんに楽しめる。
もっとも看板商品としての牛すじのデキに
不備があってはハナシにならない。
それでは文字通り、店のアキレス腱になってしまう。

【本日の店舗紹介】
「四季のおでん」
 東京都中央区銀座8-6-8
 03-3289-0221

 
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2008年4月1日(火)

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