「一歩一歩、おいしさを探して」
J.C.オカザワの脚で綴ったダイアリー

第458回
ヒドい刺身と真っ当なカツレツ(その1)

モノレールの始発駅・浜松町から
増上寺に向かって第一京浜国道を渡ると
すぐ右手にあるのが「更科布屋」。
最寄り駅は都営地下鉄の大門だ。
「布屋」を冠するそば屋は都内各地に点在しているが、
総じてJ.C.との相性がよろしくない。

ただいま、読者プレゼント受付け中の近著、
ぜったい行ってはいけない有名店
 行かなきゃいけない無名店 東京編2
」でも
不満の残る有名店として、大森海岸の「布恒更科」を
取り上げているくらいだから、推して知るべし。

実は大門の「更科布屋」も評価の低い1軒。
ところが、この店との出合いはとてつもなく古い。
あれは忘れもしない1972年の夏のこと。
まだ学生だったJ.C.はこのひと夏を
東京プリンスホテルのビヤガーデンで働いた。
思い起こせば、とても楽しいアルバイトだった。
東京では他の追随を許さぬ美しいガーデンで
緑の芝生の上で飲む生ビールの美味さは
絶大な人気を誇ったものだった。

昼過ぎに出勤してスタンバイを終えると
夕方の開店に向けて、腹ごしらえとなる。
ホテルといえども社食はあくまで社食にすぎず、
けしてレベルが高いわけではないから
しょっちゅう近所の食べ物屋に出向くこととなる。

そのうちの1軒がこの「更科布屋」。
若い頃は食欲も旺盛でパクパクとよく食べた。
ただ、濃い味付けは苦手であったために
こんなマネをしたこともあった。
濃い目にして多目の天丼の丼つゆに閉口してしまい、
別にライスを注文して、天丼ライスとしたのだった。
どんぶりモノにライスを付けたのは
あとにも先にもこのときただ1度きり。

5年ほど前に再訪して、酒とつまみとそばを所望。
この際も酒はともかく、つまみとそばは意に染まなかった。
それ以来、トンとごぶさたしたが
たまたま近くに所用で出掛けたこともあり、
懐かしさも手伝い、立ち寄る気になったのだった。

品書きに、お造り(840円)があったので
お運びの女性に内容を訊ねると、マグロとイカだと言う。
一体、あのそば屋がどんな刺身を出すのかと
興味をそそられてしまい、よせばいいのにご注文。
ビールの中瓶がカラになる頃に現れたそれは
真鯛が3切れ、色褪せたハマチみたいなのが2切れ、
そしてイクラが何粒か乗ったイカが少々。
何てこったい、説明と丸っきり別モンじゃないの。

ハッキリしなかったハマチモドキが何なのか
再び訊ねると、いったんは厨房に消えたオバちゃんが
戻って来るなり応えて曰く「シマアジだそうです」
箸先につまんで鼻に近づけると、ちょいと匂う。
こいつはアンタッチャブルだわいと
真鯛とイカだけで菊正上撰の上燗をやるものの、
添えられたニセわさびにも鼻白むことしきり。

本わさびの有無を確かめるため、三たび訊ねたが
今度は店長格の男性が悪びれもせずに
「本わさびはないんですよ」と一言。
そばの産地にこだわりを見せ、
月替わりの変わりそばを提供もしたりと
それなりの意気込みを見せるそば屋に肝心の
わさびがないのでは本末転倒、猛省をうながしたい。

           =つづく=


【本日の店舗紹介】
「更科布屋」
 東京都港区芝大門1-15-8
 03-3436-3647

 
←前回記事へ

2008年4月3日(木)

次回記事へ→
過去記事へ 中国株 起業 投資情報コラム「ハイハイQさんQさんデス」
ホーム
最新記事へ