「一歩一歩、おいしさを探して」
J.C.オカザワの脚で綴ったダイアリー

第459回
ヒドい刺身と真っ当なカツレツ(その2)

芝大門「更科布屋」で注文した刺身があんまりで
せっかくの菊正宗の相手役になりきれていない。
それではもう1品と、天ぷらそばから
そばを抜いた天抜きもお願いしたが
これまた海老の質が悪い上にコロモの付けすぎ。
半分ほど食べ進み、途中下車を余儀なくされる。
ことここに至り、締めのそばを食べる気力が
完全に消え失せてしまい、失意のままのお勘定。

行きは浜松町方面から歩いて来たので
帰りは反対側の御成門に向かう。
どこかで飲み直しを兼ねながら、
空腹を満たそうという腹積もりなのだ。
ふと、昔アルバイトをしたプリンスホテルの
「プリンスビラ」に寄ろうと思ったが
独りでの食事には不向きなスポットだ。

今ではどこでもまったく見かけることがなくなった
レディー・カーゾンやスカロップ・カプリスなど、
クラシックな料理はメニューから消えたのだろうな。
生まれて初めてドリアを食べたのはここだったっけ。
様々なことを思い出しながらも
大門をくぐる手前を右折してしまった。

すると間もなく左手に現れたのは
見るからに時代遅れの洋食屋「レストラン ジャパン」。
店先のメニューを横目に、店内をうかがうと
左手にオープンキッチン・カウンター、
その奥がダイニングとなっているようだ。
洋食屋なのにカウンターでは常連らしき客が数人、
焼酎のボトルを脇に置いて飲んでいる。
こういったオヤジ的光景は嫌いではないから
今度はメニューにじっくりと目を通し、入店を決断。

洋食店にしては陳腐な店名だが入店と同時に
キッチンとホールのスタッフ全員から
元気よく「いらっしゃいませ〜!」の声が掛かる。
料理人と接客係の息の合ったチームワークに
ほのかな期待感が芽生えたのだった。

スーパードライを注文すると生の中ジョッキが登場。
瓶のつもりでいたが、これならこれでよい。
実はこの生中、20時までは1杯300円の特別価格。
愛想のいいウエイトレスが無条件で
割安な生ビールをサーヴしてくれたのだった。
う〜ん、いい娘(こ)じゃないか!

ロースカツレツのディナーセット(1000円)を
頼んでみると、真っ当なカツレツの皿には
千切りキャベツとマカロニサラダが盛られている。
具沢山の豚汁にたっぷりのキャベツ浅漬け。
ライスは4分の1にしてもらって平らげた。
特筆するほどの料理ではないが
真心のこもった美味しさが感じられる。

昭和の喫茶店みたいな店内を埋めるのはみな
近隣のサラリーマンのようだ。
居酒屋感覚で利用していて、紫煙も立ち込めている。
若い女性の姿もほとんどなく、嫌煙家は皆無だろう。

帰りがけに店主がもらった表彰状に目がとまる。
今はなき「ホテル・ニュージャパン」時代のものだ。
何かが胃の腑にストンと落ちた。
あっ!そうか!そうだったのか!
「レストラン ジャパン」の店名の由来は
多くの死者を出して焼け落ちた、あのホテルだったのだ。


【本日の店舗紹介】
「レストラン ジャパン」
 東京都港区芝公園1-7-7
 03-3434-2392

 
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2008年4月4日(金)

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