「一歩一歩、おいしさを探して」
J.C.オカザワの脚で綴ったダイアリー

第474回
銀座も日比谷も変貌してゆく

本日、銀座の旭屋書店が
42年間に及ぶ営業に幕を降ろす。
何とも言い難い寂しさを感じる。
初めて訪れたのは高校生の頃だから、
寂寥感が伴うのも当然だろう。

手前ミソで恐縮ながら
この書店にはずいぶんお世話になった。
およそ5年の間に相当数の著書を売ってもらった。
入居している東芝ビルの立て替えが
直接の理由と聞くが、6月には水道橋店も
クローズするとあってはいささか心配である。

書店にとっては長い冬の時代が続いている。
下見の立ち読みは書店でされておきながら、
実際の注文がネットではたまったものではない。
やるせない気持ちになってしまう。
数日前に旭屋を訪れ、心で別れを告げてきた。
スタッフの方々にはただ「お疲れ様!」と言ってあげたい。

J.C.は若き日に短期間ではあるが
日比谷のデューティーフリー・ショップに勤めた。
おかげで数寄屋橋から銀座4丁目の交差点あたりまでは
当時のランチ・テリトリーだったのだ。
旭屋書店と同じ東芝ビルの地下にある「直久」のラーメン。
有楽町ガード沿いの「慶楽」の叉焼飯。
その脇をちょっと入った「いわさき」のワカレ。
昔お世話になっていて
今も残る数少ない思い出のランチメニューだ。

食事処「いわさき」のワカレというのは
いわゆるかつ丼のセパレート版。
かつ煮とごはんが別々に出てくるものだ。
旭屋の帰りに、そのワカレが食べたくなった。
岡本太郎作「若い時計台」のある数寄屋橋公園を抜け、
マリオンのはす向かいのガードをくぐろうとすると
すぐ手前にあるパスタの店「サンレモ」が
「パレルモ」と、その名前を変えている。
この店にもよく通った。
日比谷の映画街でロードショーを観たあとに
アルデンテではないスパゲッティを
ビールと一緒に食べ、チンザノ・ロッソの
オンザロックで締めたものだった。

「アマンド」の角を曲がると
「いわさき」が昔のままの姿を見せている。
店内もまったく変わっちゃあいない。
変わったのは店主夫妻が歳を重ねたこと。
殊にご主人はめっきり老け込んでしまった。
もっとも客のこちらにしたって
ずいぶん歳を取ったのだけれど・・・。

さっそくワカレをお願いする。
豊富な小鉢から何か一品をと思ってはみたが
相席のテーブルが少々狭いので
その日は自重することにした。
割下の色濃い、かつ煮が現れた。
玉子のトジ加減がとてもいい。
見た目通りに味も濃く、相当に甘くてしょっぱい。
でもこれが他店にはない、独特の味で実に旨いんだな。
あっという間にどんぶりメシが消えてなくなった。
さばの塩焼きも人気で、無名時代の森進一にとっては
この店のさば塩定食が大のご馳走だったそうだ。


【本日の店舗紹介】
「いわさき」
 東京都千代田区有楽町1-6
 03-3591-4740

 
←前回記事へ

2008年4月25日(金)

次回記事へ→
過去記事へ 中国株 起業 投資情報コラム「ハイハイQさんQさんデス」
ホーム
最新記事へ