「一歩一歩、おいしさを探して」
J.C.オカザワの脚で綴ったダイアリー

第481回
旧赤線地帯を散策する(その2)

北千住の旧赤線地帯を歩く前に
キッチュな洋食店「ニューあわや」で
カツカレーを食べている。
もともとは和菓子専門店だったのが
ずいぶん前から洋食も出すようになり、
その変身に伴って、店名を「あわや」から
「ニューあわや」に変更したそうだ。

カツを1切れ食べて、期待以上のものを感じ、
今度はカレーとライスを1サジすくう。
町場風といえばそれまでだろうが
箸にも棒にも掛からないカレーが
目立つ今日この頃、これなら及第点を付けたい。

スプーンを動かしながらも
隣りの空いたテーブルに視線が流れ、
何やら奇妙なモノに目が釘付けになった。
卓には敷かれた新聞紙の上に
ステンレスの金枠が3本置かれて
その中にはドロリとしたゼラチン状の物質が
詰め込まれているのだ。
てっきり煮凍りでも作っているのかと思ったが
サカナ臭い匂いが漂ってくるでもなし、
カツカレーを口に運びながらも気がかりで仕方がない。
ここでポンと膝を打った。
そうだ、この店は和菓子屋じゃないか、
これは羊羹だよきっと。
そうだ、そうに違いない。

疑問から解き放たれ、気分爽快で千住の街を歩む。
途中、興味を惹かれる店が続々と出現する。
これだから散歩はやめられません。
最初は「ニューあわや」からほんの1分、
同じ通りにある「鮒秋(ふなしゅう)」なる佃煮屋。
看板に千住名物・鮒寿ゞめ焼きとあった。
鮒のすずめ焼きは今となっては
肝心の鮒が獲れなくなり、ハヤで代用されるらしい。

そのまま北に向かって歩くと
今度は「かどや 槍かけだんご」が左手に現れた。
創業半世紀を超えて、だんごを売り続ける老舗である。
心ゆさぶる年輪を見せる建物は明治末期のものらしい。
甘党でなくとも素朴なみたらしと餡だんごを
買い求めたくもなるが、
さすがにカツカレーのあとではそうもいかない。
また次の機会にと思いとどまったけれど、
一体いつのことになるのやら・・・。

日光街道を西に横断すると、いろは通りの商店街。
千住大川町と千住寿町の境を細々と走っている。
荷風ゆかりの玉の井にも同名のレトロな通りがあるが
こちらも負けず劣らずの風情をかもす。
南側が千住柳町に名前を変えると
通りの名もニコニコ商店街に変わった。
まだ昼下がりだというのに屋台のおでん屋が
チリンチリンと鉦を鳴らしながら路地をゆく。
往時は春をひさぐ女たちが
客に秋波を送った小路におでんの匂いが漂っている。

今度は千住大門商店街に分け入った。
千住柳町と千住瀧田町の間の通りだ。
ここも北側が千住元町と町名を変えると
通り名も千住えびす会と変わるのだった。
抜け切って墨東通りに突き当たる。
右手に北上すると尾竹橋、左手に南下すれば千住大橋。
迷いながらも尾竹橋を渡り、町屋・三河島を経て
根岸の里を目指すべく進路をとった。
はて今宵の晩酌は、根岸か、入谷か、浅草か。

 
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2008年5月6日(火)

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