「一歩一歩、おいしさを探して」
J.C.オカザワの脚で綴ったダイアリー

第482回
歌声 ホールに響けども

ワイン好きの仲間の集まりに
「煩悩の会」というのがあって
4月中旬にもその飲み会が開催された。
かれこれ結成から丸10年も経つのだから
この手の会としてはずいぶん長いこと
存続していることになる。
いやはやまったく、光陰矢の如し。

立ち上げ当初は毎回十数人が集まり、
最盛期には30人を超えることもあったが、
その後、衰退の兆しを見せ始め、
ここのところは出席者の数もずっと低迷気味。
殊に女性のメンバーが櫛の歯が抜けるように
その数を減らしていくのが大きく影響している。

当時は20代後半から30代前半だった彼女たちも
10年も経てばみな40歳前後、
ほとんどの方々がとっくの昔に嫁がれた。
結婚だけであれば、理解ある夫に恵まれた人は
その後もたまには参加していたが
出産となったらもうムリ、壊滅状態と相成った。
もっとも幼い子どもそっちのけで
ワイン三昧でもあるまい。

通常、この「煩悩の会」は
カジュアルなイタリアンかフレンチ、
あるいは多国籍や無国籍料理の店で開催される。
たまたま4月の会は市ヶ谷にある
ドイツ料理の「パウケ」で開かれた。
ビアレストランでというのは珍しい。
7年ほど前の吾妻橋のアサヒビール直営店、
「ファランドール」以来ではなかろうか。
本格的なドイツ料理というのは初めてだ。
入店して間もなくライヴのミュージックが始まった。
ヴォーカルにピアノ、ヴァイオリンにクラリネットだ。
聞き覚えのある「ローレライ」や
「ビヤ樽ポルカ」の歌声が店内に響き渡る。
テーブルのレイアウトの関係か
どうもステージと客との一体感が生まれない。
「銀座ライオン」系や「ゲルマニア」のほうが
ノリがいいような気がする。

メニューを開くとビールのラインナップがすさまじい。
こんなに揃えてコンスタントに回転するのだろうか。
ビールは新鮮なほうが旨いというから心配になってくる。
レーベンブロイの生で始め、ホルステンの小瓶、
シュパーテンの黒の小瓶と飲み継いだ。
そのあとはドイツの赤ワインのシュペートブルグンダー。
いわゆるピノ・ノワールである。

料理は最初にポテトサラダを添えたニシンのスモークと
ジャーマンポテトを添えたヴァイスヴルスト。
ヴァイスヴルストというのは直訳すれば白ソーセージ。
ミュンヘン名物のきめ細かいソーセージで
蜂蜜入りのハニーマスタードで食べるならわしだ。
基本的に焼くよりもゆでるほうが美味しい。
スパニッシュオムレツに似た田舎風オープンオムレツ、
ニュールンベルグ風焼きソーセージなんてのもつまむ。

そのあとは当夜の主役のアイスバイン。
いわゆる豚のスネ肉なのだが
ズドンと塊りで登場して、ローストチキンが
ピンクに染まったような様相を呈し、
脇にはたっぷりのザウアークラウト。
蜜にたかる蟻の如く、ワアーッとみんなで食らいつき、
太い骨だけが皿に残った。
レバー入りミートローフのレバーケーゼも追加し、
歌声の中でとどまるところを知らない食欲であった。


【本日の店舗紹介】
「パウケ」
 東京都千代田区四番町4-8野村ビルB1
 03-3264-7890

 
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2008年5月7日(水)

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