「一歩一歩、おいしさを探して」
J.C.オカザワの脚で綴ったダイアリー

第483回
何だ神田の多町大通り(その1)

東京メトロ銀座線の神田駅が最寄りながら
JR神田駅北口からも歩いて数分のところに
神田多町という奇妙な町がある。
1丁目もなければ3丁目もない、2丁目だけの町だ。
昔ここには、やっちゃ場(野菜市場)があった。
今も往時を偲ぶよすが、ここかしこに残っている。

多町のメインストリートにあって
広く世に存在を知られている店は2軒。
筆頭格は太平洋戦争が
終結した年に創業した「栄屋ミルクホール」。
今でも当時のミルクホールを名乗っていても
実際は街の食堂という感じで
ラーメンやカレーライス、
おにぎりやおいなりさんを商う店だ。
今月末にお目見えする冷やし中華も人気商品の1つ。

もう1軒は鳥肉専門店の「鳥正(トリショウ)」。
コロッケ・メンチカツ・トリカツがこの店の三大名物。
自家製の鶏油を使用するので揚げ上がりが軽く、
胃もたれの心配はまったくない。
近くに立ち寄る機会があったら
ぜひご家族へのおみやげとしていただきたい。

コロッケには鶏の挽き肉を使う。
メンチは挽き肉にレバーまで加わるから
あっさりしているようでコク味じゅうぶん。
トリカツは200円の並と250円の上があり、
小ぶりながら170円と一番安いササミカツもある。

多町大通りにはほかにも安さとボリュームが
自慢の「天婦羅 いもや」があったが
ご主人が亡くなって店をたたんでしまった。
神保町界隈に数軒の暖簾分けが
営業を続ける「いもや」が学生の味方としたら
多町の「いもや」はサラリーマンの味方だった。

この通りをほんのちょっと入ったところに
根強いファンを持つとんかつ店「勝漫」がある。
ロースやヒレのとんかつだけでなく、
特大サイズのかつ丼も有名だ。
ところがJ.C.はなぜかこの店との相性が悪く、
いまだに満足できたためしがない。

そうこうするうち、
揚げ場を仕切っていた職人さんが
1年ほど前に独立して
「とんかつ やまいち」なる新店を近所に開いた。
「勝漫」から歩いて1分ほどの至近距離で
しかも大通りに面したロケーション。
どんな経緯があったのか存ぜぬが
常識では考えられないことだ。

現在、日経新聞朝刊に連載中の
「望郷の道」(北方謙三作)では
菓子舗を経営する主人公の藤正太が
2軒のライバル店のすぐ目と鼻の先に
それぞれ自分の支店を開いて対抗するのだけれど
それはお互いに敵同士だからできること。
「勝漫」と「とんかつ やまいち」とは
まったく事情が異なるハナシだ。
新生「勝漫」は訪れているので
新店「やまいち」にも行かねばならぬ。

 
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2008年5月8日(木)

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