「一歩一歩、おいしさを探して」
J.C.オカザワの脚で綴ったダイアリー

第496回
クリオネがいた網走 =居酒屋北帰行(その1)=

NHK国際放送の旅番組、
「Out & About」のロケで春まだ浅い北海道へ。
道東の居酒屋をぐるりと巡って
居酒屋フードのルーツを探ろうという企画なのだ。
網走・釧路・屈斜路湖畔に
魚すり身・炉端焼き・ザンギがゆかりの店を訪ねた。
国内の放送予定がないのが残念ながら
それを埋め合わせるため、当コラムでリポートしたい。

旅は道連れ、世は情け。
今回の旅の友はワシントン州出身、
ファッションスタイリストのミーシャ・ジャネット。
いまだうら若き美女である。
羽田空港で顔を合わせ、それからの行動をともにする。

最初の夜は網走の「蒸汽船」なる居酒屋へ。
この番組にとって最初の店で、当然カメラが入る。
カウンター席に陣取り、店の大将とわれわれがからむ。
生ビールのジョッキ片手に枝豆をつまみながら
あれやこれやとこの土地ならではの
面白いハナシを聞きだしてゆく。

目の前のガラスケースには
新鮮な魚介類がズラリと整列。
目を引くのが厚切りのますのすけ(キングサーモン)。
ツブ貝と真がきも見るからに上物だ。
5月も中旬を回ったというのに
この地では冬がシーズンの真がきを楽しめる。
ホッケやなめたがれいの一夜干しに混じって
東京ではあまり見かけないツボ鯛も並んでいる。
悪相につき、頭をすぐに落としてしまうため、
その顔立ちを知る人とて少ないが、おいしいサカナだ。

網走から全国に広まったという魚すり身は
信頼の置ける店から仕入れたものを
注文のたびに油で揚げて供する。
すり身自体は自家製でなくとも熱々で出す。
さすがに本場のことで、壁の品書き札には
すり身だけで7〜8種類も揃っていた。

ミーシャは海老、J.C.は玉ねぎと、
互いに好みのものを注文してみる。
関東でいうところの薩摩揚げなのだが
生ビールにも日本酒にもよく合った。
酒は旭川の「大雪の蔵」。
ミーシャはレモン酎ハイに切り替えている。
かきとホッケを焼いてもらい、
ますのすけはバター焼き、ツブは刺身だ。
初日の夜から絶好のスタートを切ることができた。

ホテルにチェックイン後、
ディレクターのH道クンを始め、
まだ何も口にしていないスタッフと一緒に
近くの居酒屋「志帆川」に流れる。
一同、白子の天ぷらやカキフライに舌鼓を打つ。
お腹がすでにいっぱいのJ.C.は
もっぱら店の水槽で泳いでいるクリオネの観察だ。
貝殻のない貝はあまりにも小さくてはかない。
それでもその可憐な姿に心が和む。
これを世間では「癒し」というのだろう。
今年いっぱい生きていれば、長生きのほうらしいが
世の中には実にフシギな生き物がいるものだ。


【本日の店舗紹介】
「蒸汽船」
 北海道網走市南3条西1
 0152-43-3330

 
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2008年5月27日(火)

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