「一歩一歩、おいしさを探して」
J.C.オカザワの脚で綴ったダイアリー

第498回
夜霧の町・釧路 =居酒屋北帰行(その3)=

北浜駅舎内の洋食店「停車場」で
期待を上回るポークカツレツを食べ終え、
再び車中の人となる。
この日はあいにくの悪天候のため、
楽しみにしていた斜里岳の冠雪を
拝むことはかなわなかった。

川湯温泉駅を通過した。
車窓越しに眺めた硫黄山は
明日あらためて訪れる手はずとなっている。
汽車は南下を続け、やってきたのは霧の町・釧路。
駅からそのまま港に向かうと、
本当に霧が立ち込めている。
スケソウダラ漁を終え、ホッと一息ついて
帰り支度の漁船の船長を無理やり捕まえ、
相手の迷惑も考えずにさっそく取材だ。
船長にしてみれば拿捕されたに等しい。

駅前の和商市場に戻り、撮影を続ける。
網走も釧路も14年ぶりなのだが、
心なしか以前より市場がしずんでいるようだ。
市場に限らず、町全体に活気がない。
移動のお世話になった運転手さんに訊くと
若者がどんどん流出して人口は減るいっぽう、
釧路の若者は東京とは言わないまでも、
こぞって札幌を目指すんだそうだ。
そんなもんでしょうかね。

夜の帳(とばり)が下りたら
今宵の一軒目はザンギ発祥の店「鳥松」。
ザンギというのはいわゆる鳥の唐揚げ。
もともとは北京語の揚げ鳥を意味する
ザーチーからきているらしい。
骨付きのブツ切りを揚げるのが
本来の姿なのだがブロイラーが出回り、
骨抜きの鶏肉が簡単に手に入るようになって
急激に普及し始めたそうだ。
おそらく1960年代後半のことではあるまいか。

釧路はまた、炉端焼き発祥の地としても知られている。
二軒目は釧路川を隔てて
フィッシャーマンズワーフの向かい側にある「浜番屋」。
蟹を中心とした炉端焼きの人気店だ。
大きな水槽の中に毛蟹・たらば蟹・ずわい蟹がひしめき、
客はめいめい好きな蟹を選ぶシステム。
撮影のことを考えると
毛蟹はミソがうまいが少々食べにくい。
たらばは大きすぎてややもすると大味だ。
ここはサイズもほどよく、味も繊細なずわいを選択する。
あとは北寄貝と帆立貝。
これはあぶって貝殻が開いたところを半生でやり、
刺身とは一味違った磯の風味を楽しむ。

釧路にも真がきがあった。
やや大きめな厚岸産が主流で
小ぶりの仙鳳趾(せんぽうし)産がそれに混じる。
両者を食べ比べてみると、厚岸産もさることながら
清冽なおいしさの仙鳳趾産には文字通り、舌を巻いた。
大好きな三重県の的矢産によく似ている。
厚岸湾の西岸の小さな村が仙鳳趾。
初めて耳にした地名ながら、ここのかきは実に美味だ。


【本日の店舗紹介】
「鳥松」
 北海道釧路市栄町3-1
 0154-22-9761

「浜番屋」
 北海道釧路市入船3-1-16
 0154-43-0114

 
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2008年5月29日(木)

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