「一歩一歩、おいしさを探して」
J.C.オカザワの脚で綴ったダイアリー

第502回
どんぶりに山盛りの野菜炒め(その1)

野菜炒めという素朴な料理は
もちろん家庭でも簡単にこしらえることができるが
外食となると中華料理屋の専売特許ではなかろうか。
それも町の中華屋さんの得意とするところであって
本場中国の味を前面に押し出す本格的中国料理店では
中国野菜の炒めや青菜炒めがメニューにあっても
キャベツやにんじんや玉ねぎやもやしを炒めただけの
庶民的な野菜炒めを見かけることは、まずない。

通常は皿に盛られて登場するはずだが
どんぶりに、しかもテンコ盛りでズドンと来る店がある。
JR京浜東北線の上中里は都心から北に向かい、
田端の一つ先、王子の一つ手前の駅。
まったくもって何もない場所で淋しい改札口を出ると、
目の前の通りも負けず劣らず、うら淋しい。
若い女性の夜の一人歩きが危ぶまれるくらいだ。

改札を右に出たら、緩やかな坂を上って数十メートル。
町の中華屋さん「百亀楼」が暖簾を掲げている。
4人掛けのテーブルが4卓だけの小さな店は
30代と思しき夫婦2人きりの切り盛りだが
昼めしどきは店主のお母さん?も手伝うようだ。

晶文社の次作の企画が
「J.C.オカザワの昼めしを食べる」に決定したので
このところ昼めし取材におおわらわ。
定食のごはんは半分、麺類の麺は少なめにしてもらい、
昼食を2度取ることも珍しくない。
夜にも昼と同じ料理を出す店には
夜に出向いておかずとごはんを食べたりもしている。

その夜もそんな一夜であった。
駒込は霜降橋の洋食店「キッチンK」で
平目のムニエル&半ライスを
ビールとともに食べ終えたあと、
北東に向かって歩き、古河庭園の前を通過し、
上中里駅方面に坂を下っていて
出くわしたのが「百亀楼」だった。

入店したことはなかったが
どこかで得た情報では
ボリュームのすさまじさが強調されていた。
さすがにこの夜は胃袋にスペースの余裕がほとんどない。
それでもビールは中瓶1本しか飲んでいないし、
飲みものだったら、まだまだいらっしゃい状態だ。
デザートが女性の別腹に収まるがごとくに
酒はJ.C.の別腹に落ちてゆくのである。

「百亀楼」のビールは大瓶。
銘柄はキリンの一番搾り。
数年前までは苦手なビールだったが
最近は苦もなく飲めているので問題はない。
ビールだけではサマにならず、餃子も頼んだ。
ビールを飲み、餃子をつまみながら
日経の夕刊にゆっくりと目を通す。

狭い店なので客は入れ替わり立ち代り。
そのたびに相席になったりならなかったり。
黒甕(芋焼酎)のロックをお願いしたとき、
相席の親子3人連れが注文した
野菜炒めが出来上がった。
盗み見るつもりこそなかったが
チラリと目に入った野菜炒めに目が釘付けとなる。

           =つづく=

 
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2008年6月4日(水)

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