第511回
激安ラーメン いまだ健在!
自分で言うのもおこがましいが
このコラムで人気の気に入りラーメン店再訪シリーズ。
今回は都内でもセレブの多い世田谷区に出没した。
「昼めしを食べる」と「庶ミンシュラン」の取材を兼ねて
下高井戸、桜上水、経堂あたりを踏査したあと、
小田急線・豪徳寺と東急世田谷線・山下が
隣接する場所にある「満来」に到着したときには
日がとっぷりと暮れ、月に雲がかかっていた。
「満来」を訪れたのはおよそ6年半ぶり。
店先には見覚えのある看板・暖簾・
幟(のぼり)・品書きの4点セットが昔のままだ。
看板に沢の鶴とあるから酒造メーカーからの
もらい物であることが判る。
白地に赤く雷文を配した暖簾のループを通す鉄棒が
半円を描いていかにも町の中華屋といった風情。
赤い幟は暖簾と逆に赤地に白い雷文の縁取りがあり、
中央にはラーメン餃子の文字が見える。
白板には黒字で細かくメニューが書き出されている。
懐かしさを覚えつつ暖簾をくぐった。
店内の様子は見覚えがあるような、ないような。
前回には厨房に立っていた先代店主の姿が見当たらない。
息子さん夫婦だろうか、代替わりをしたらしい。
先客は4人ほどで思ったより空いている感じ。
それでも狭い店だから
カウンター席以外は1卓空いていただけだ。
ビールを注文すると
キリン・クラシックラガーの大瓶が来た。
値段表に550円とあり、ずいぶん安い。
ビールの友の野菜炒めは400円。
少なめにしてもらっても、そこそこの量がある。
豚肉はあまり入っておらずに野菜中心。
野菜炒めだから当たり前か。
15分ほど掛けてビールを飲み干し、
目当てのラーメンをお願い。
これがたったの200円とは驚きだ。
格安ラーメンチェーンの
「日高屋」や「幸楽苑」も顔色ナシだろう。
すっきり醤油味のスープに
中太のちぢれ麺が泳いでいる。
さすがに量は少ない。
具には小さいながらも脂身の付いたももチャーシュー、
これまた小さいナルト巻きに焼き海苔、
そしてシナチクと一通りの顔ぶれが揃っている。
一口すすって、麺に変わりはないようだった。
変わったのはスープのほうで
コク味が薄れたように思う。
見た目は典型的な昔ながらの中華そばだが
風味に懐かしさは感じられない。
ひょっとすると、麺自体もかん水の少ないものに
変わってしまったのかもしれない。
このあたり、記憶が曖昧なのだ。
値段を思えば、文句が付けられないのは百も承知。
それでも以前の味なら電車賃を払ってでも
出掛けて行って食べる価値のあるラーメンだった。
今は近くに行く用事があったら
ついでに立ち寄るくらいでいいだろう。
ただし、200円のラーメンを提供する志には
心からの敬意を表したい。
【本日の店舗紹介】
「満来」
東京都世田谷区 1-45-1
03-3429-5377
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