第513回
猫がまたいだソーセージ
一夜、飲み過ぎてしまい、
ヘロヘロになってたどり着いた浅草橋駅。
翌朝には軽い二日酔いが予想される。
どんなに飲んでも苦しみ抜くほどの
二日酔いに見舞われないのは
毎朝飲むウコンのおかげだと信じて疑わない。
ふだんはデザートを始め、
甘いものにはほとんど手をつけないのに
二日酔いの朝だけは甘い飲みものがほしくなる。
どこかのドクターが新聞に寄せた記事にもあった、
そんなときにはミネラルウォーターやお茶類よりも
糖度の高いものを飲んだほうが回復が早く、
フル稼働している肝臓のためにもなるのだと。
駅から自宅までの道すじには
サンクスとセブンイレブンの
2軒のコンビニエンス・ストアがある。
唐突ながらセブンイレブンの豆腐はおいしいが
ソフトドリンクの品揃えはサンクスのほうが
豊富なのでそちらへ廻った。
酔っ払ったお父さんが酔った勢いで家族のために
余計な手みやげを買うことは多々あるが
その夜のJ.C.はまさにその典型。
4年ほど前から一緒に暮らすカノジョに
何か買って帰ろうと思い立ったのだった。
ウチの相方の大好物はまずコンビーフ。
そしてツナの缶詰にロースハム。
変わったところでは
おいなりさんの甘辛い油揚げで
酸っぱいからか、中の酢めしは食べない。
酔っていて見落としたか、コンビーフが見当たらない。
ロースハムはぜいたくだし、いなり寿司だと
酢めしがこちらに回ってくる。
買い求めたのは魚肉のソーセージ。
1本手に取ると、なぜかゴッソリ付いてきた。
4本まとめてグルグル巻きにされていたのである。
酔っていなけりゃ、棚に戻すところを
ついハズミがついて買っちゃった。
ついでに今まで飲んだことのない
クリアアサヒなる発泡酒の、それもロング缶を購入。
この期に及んでまだ飲みたい自分があさましい。
帰宅後、さっそくソーセージをサイの目に切って
カラになったカノジョ専用のお皿に投入する。
さぞや喜んで食べ始めるかと思いきや、
いっこうに手を、いや、口を付ける気配がない。
そうこうするうち、丸一日半が経過して
哀れソーセージはカラカラにひからびてきた。
しかし猫というのはエラいもんですな、
自分のエサ皿に何かが入っているうちは
おねだりをしないのである。
普段は腹が減ったらニャーニャーと
うるさくて仕方がないのに、じっと我慢の仔であった。
シツケができているというか、プライドが高いというか、
あの飼い主にして、この飼い猫で
さすがにわが愛猫ではないか。
そもそも猫がまたぐようなソーセージを
どこのどいつが作ったんだヨ!
売り上げに影響するといけないから
メーカー名は伏せておくことにします。
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